福山市民病院循環器内科の渡邊敦之氏

 不整脈の中でも持続性心室頻拍(VT)あるいは心室細動(VF)の場合、血漿中のエイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(AA)の比(EPA/AA比)がVTやVF以外の不整脈より有意に低いことと、VFの中では非虚血性VFの方が虚血性VFに比べ低値であることが分かった。3月15日から17日まで横浜で開催されていた第77回日本循環器学会(JCS2013)において、福山市民病院(広島県)循環器内科の渡邊敦之氏らが発表した。

 EPA/AA比低値は心血管イベントに関連する可能性が示されている。その一方、魚油に含まれる脂肪酸の摂取が致死性の心室性不整脈(VA)や心臓突然死(SCD)を有意に減少させることが複数報告されている。しかし、そのメカニズムは十分に明らかになっていない。このメカニズムの解明の糸口を探る目的で、渡邊氏らはEPA/AA比と致死的心室性不整脈の関連について分析を試みた。

 対象は同病院の近隣の医療機関から不整脈症状で紹介を受けた504例。疾患の内訳を見ると、発作性心房細動(PAF)と慢性心房細動(CAF)が多く、両者で半数以上を占めていた。また、VF患者(43例)の51%が非虚血性VFによるSCDを回避した症例だった。

 まず、致死性VA(VTおよびVF)群とその以外の不整脈の患者群で、EPA/AA比を含む各種心血管疾患関連リスク因子を比較した。さらに、不整脈と診断されていない自施設の循環器疾患患者67例を対照群とした。

 その結果、致死性VA群のEPA/AA比の平均値は0.29±0.14で、その他の不整脈の患者群に比べて低く、対照群(0.45±0.27)に対しては有意に低値だった(P<0.01)。その一方、BNPやHbA1c、LDL/HDL比、マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA-LDL)、CRPといった心血管疾患関連リスク因子では特に群間差は見られなかった。

 次に、VF群を虚血性VF群(21例)と非虚血性VF群(22例)に分け、健診などで基礎疾患を有さないことが確認された健常者34例を対照群として検討した。EPA/AA比の平均値を見ると、虚血性VF群は0.33±0.13、対照群は0.43±0.23であったのに対し、非虚血性VF群は0.28±0.15と最も低かった。

 渡邊氏はこれらの結果を受け、「EPA/AA比は致死性心室性不整脈の発症に関連することが推察された。今後は、EPA投与がVFによる心臓突然死の予防に寄与する可能性について、長期にわたる前向きの検討が必要だと考えている」とまとめた。