国立国際医療研究センター循環器内科の池田長生氏

 1,5アンヒドロ-D-グルシトール1,5-AG)は、冠動脈の有意狭窄病変を予測する有意な因子であることが報告された。一方、HbA1c値は、有意な予測因子ではなかった。国立国際医療研究センター循環器内科の池田長生氏が、3月15日から横浜で開催中の第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 HbA1c値は、耐糖能異常のマーカーとしても用いられており、非糖尿病患者において冠動脈疾患の重症度、心血管イベントや生命予後と関連を持つことが報告されている。しかし、食後高血糖などの短時間の血糖値上昇の影響を過小評価する可能性が指摘されている。

 一方、同じく血糖コントロールの状態を示すマーカーの1,5-AGは、血糖変動に応じてその値が大きく変化し、尿糖(血糖値がおよそ170mg/dLを超えたときに出現)とともに尿中に排出されるため、糖尿病患者や食後高血糖患者において低値を示す特徴を持つ。

 今回、池田氏らは、HbA1c値と1,5AGの2つのマーカーについて、(1)冠動脈病変の有無、(2)冠動脈病変の複雑性(石灰化が強い、分岐部、長い、曲がっているなど)――の予測能を比較した。

 対象は、2011年7月から2012年9月までに、国立国際医療研究センター病院で初回診断カテーテルを実施した連続191人。病変のある患者は92人、病変のない患者は99人だった。

 冠動脈病変の有無別に患者背景を比較すると、病変のある患者群において、男性割合(79.3% 対 55.6%)、糖尿病患者の割合(48.9% 対 27.3%)、LDL-コレステロール値(110.9mg/dL 対 100.4mg/dL)、HbA1c値(NGSP値)(6.4% 対 6.0%)が有意に高かったほか、1,5-AG値が有意に低かった(13.2μg/mL 対 17.9μg/mL)。

 冠動脈病変の予測能を比較するため、ROC曲線で解析した結果、HbA1c値のAUCは0.621に対し、1,5-AGは0.657と高かった。ただし、両者に有意差があるかについて、今回は検討していない。

 さらに、冠動脈の有意狭窄病変を予測する有意な因子を多変量解析で検討。その結果、1,5-AGが有意な因子として抽出された(オッズ比:0.939、95%信頼区間0.897-0.982、P=0.0065)。そのほか、男性、年齢も有意な因子だった。一方、1,5-AGの代わりにHbA1c値を含む因子で多変量解析したところ、HbA1c値は有意な予測因子として抽出されなかった。

 冠動脈疾患の複雑性を示すSYNTAXスコアと、HbA1c値または1,5-AGとの関係を調べたところ、それぞれ有意な相関を示した。HbA1c値が上昇、もしくは1,5-AG値が低下するにつれ、冠動脈病変の複雑性が増加した。

 これらの結果から池田氏は、「1,5-AGは、糖尿病の因子で調整しても、冠動脈の有意狭窄病変の独立した予測因子として抽出されており、HbA1c値よりも予測能に優れていることが示された」と語った。

 今回の結果について池田氏は、「機序は明らかでないが、冠動脈病変の形成には『血糖変化』が影響を与えているのではないかと考えている。また、これまでの検討結果から、冠動脈病変の形成は、糖尿病の手前の段階である耐糖能異常の時期に最も進むと言われている。そのため血糖変化を示し、耐糖能異常を反映する指標とされる1,5-AGが、冠動脈病変の予測マーカーとして有用だったのではないか」と考察した。

 また、今回の解析の限界として、対象が初回診断カテーテルを行った患者としていることから、これまで冠動脈について評価されていない人に限られている点、糖尿病罹病期間や治療内容についてなどの十分なデータがない点を挙げた。