東京都CCUネットワーク学術委員会のメンバーである東海大学循環器内科の村上力氏

 東京都内のCCU施設を持つ68医療機関からなる「東京都CCUネットワーク」に登録されたたこつぼ型心筋症患者のデータを解析した結果、男性は身体的ストレス、女性は精神的ストレスが先行する例が多いことが示された。また、男性ではより重症化しやすい可能性が示唆された。東京都CCUネットワーク学術委員会のメンバーである東海大学循環器内科の村上力氏が、3月15日から横浜で開催中の第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 たこつぼ型心筋症は、身体的・精神的ストレスを契機に発症する疾患で、女性に多いことが知られている。日本人の男性患者割合は12.7%との報告があるが、男性と女性の臨床学的特徴を比較した報告は少ない。

 そこで村上氏らは、2010年1月1日から2011年12月31日までに東京都CCUネットワークデータベースに登録された244人(男性55人、女性189人)のたこつぼ型心筋症患者について、男女間において臨床学的特徴に差があるか検討した。たこつぼ型心筋症の診断基準はMayo Criteriaを使用した。

 患者背景を比較したところ、先行するストレスに男女差が確認され、男性では身体的ストレス(急性呼吸不全、脳血管障害、感染症、術後、外傷など)が、女性では精神的ストレスが先行する患者が有意に多かった(P=0.019)。身体的ストレスが先行した患者の割合は、男性患者の52.7%、女性患者の32.8%、精神的ストレスについてはそれぞれ18.2%、32.8%だった。

 入院時の採血データについては、CRP値とeGFR値において男女間に有意差が見られた。男性のCRP値は有意に高く(3.17mg/dL 対 1.69mg/dL)、eGFR値は不良だった(52.7mL/分/1.73m2 対 66.5 mL/分/1.73m2)。

 入院時のバイタルサイン、心電図所見、エコー所見については、男女差は確認されなかった。

 入院中の臨床経過を比較すると、心不全の重症度分類であるKillip分類がII度以上、III度以上の患者割合が、女性患者よりも男性患者で有意に高かった。Killip分類II以上の患者割合は、女性患者の24.3%だったのに対し、男性患者では43.6%を占めた。また、呼吸循環状態のサポート(11.1% 対 32.7%)、心臓ペースメーカー植え込み術(1.1% 対 5.5%)、致死性不整脈(3.7% 対 9.1%)についても男性患者の割合が有意に高かった。一方、全死亡や入院期間に有意差はなかった。

 さらに、多変量解析を用いて、心臓合併症(Killip分類がII度以上、全死亡、カテコラミン使用、大動脈内バルーンポンプ、経皮的心肺補助装置、持続的血液透析、ペースメーカー植え込み術、呼吸循環状態のサポート)の有意なリスク因子を検討したところ、男性(オッズ比:2.07)、CKD(同:1.87)、白血球数が中央値よりも高値(同:2.29)、BNP値が中央値よりも高値(同:3.64)が抽出された。

 これらの結果から村上氏は、「男性は身体的ストレス、女性は精神的ストレスが先行する例が多いことが示されたほか、男性ではKillip分類がより重症で、呼吸循環状態のサポートなどが必要な症例が多いことが示唆された」と語った。

 女性に比べ、男性で重症化している原因としては、「これまでの研究報告を踏まえると、エストロゲンの存在が重症化を防ぐ方向に作用している可能性や、男女間の遺伝子発現プロファイルの違いが炎症反応の違いを生んでいる可能性が考えられる。男性患者でCRP値が有意に高かったことについても、女性に比べ、男性では心筋炎症反応が強く出ていることが推測され、それにより重症化しているのではないかと考えられる」と指摘。男性でより重症化する原因については、さらなる検討が必要であると語った。