弘前大学循環呼吸腎臓内科学の遠藤知秀氏

 血中のエイコサペンタエン酸(EPA)アラキドン酸(AA)の比(EPA/AA比)が低い急性心筋梗塞患者は、発症から30日間における死亡率VF発生率が有意に高かった。3月15日に横浜で開幕した第77回日本循環器学会(JCS2013)で、弘前大学循環呼吸腎臓内科学の遠藤知秀氏らが発表した。

 n-3系多価不飽和脂肪酸やEPAは心筋梗塞や冠動脈疾患の患者に対し有用であることが、国内外の臨床試験で示されている。また、EPA低値が心筋梗塞の慢性期における死亡の独立したリスク因子であることも報告されている。さらに近年、EPA/AA比は心血管イベントを予測する指標の1つではないかと注目されている。そこで遠藤氏らは今回、心筋梗塞の急性期におけるEPA/AA比の意義を明らかにするべく、発症後30日間における臨床イベントとの関連を検討した。

 対象は、2010年8月から2012年3月に、心筋梗塞発症後12時間以内に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が施行され、再灌流が得られた連続200症例とした。これらの患者を、入院時の採血データから算出したEPA/AA比の中央値である0.47をカットオフ値として、低値群(0.47以下、100例)と高値群(0.47超、100例)の2群に分けて検討した。

 患者背景を見ると、年齢については、低値群が61.1±13.3歳、高値群が70.1±10.3歳と、有意差が認められた(P<0.01)。しかし、男性比率やBMI、喫煙率、高血圧や脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)の合併率だけでなく、冠動脈責任病変の部位や心筋梗塞の重症度などについては、両群間に有意差が認められなかった。

 心筋梗塞発症から30日後までの死亡率をカプランマイヤー法で解析したところ、高値群は1.0%、低値群は8.0%と、低値群で有意に高かった(P=0.018)。さらにCox比例ハザードモデルで多変量解析を行ったところ、Killip分類2〜4のハザード比(HR)が8.580(95%信頼区間[CI]:1.510-48.76、P=0.015)、EPA/AA比低値のHRが9.869(95%CI:1.054-92.42、P=0.038)となり、いずれも死亡に対する有意かつ独立したリスク因子として抽出された。

 同様に、心室細動(VF)発生率をカプランマイヤー法で解析した結果、高値群は6.0%、低値群は16.1%と、低値群の方が有意に高かった(P=0.025)。同じく多変量解析を行ったところ、Killip分類2〜4のHRが4.149(95%CI:1.788-9.615、P=0.001)、EPA/AA比低値のHRが3.546(95%CI:1.108-8.333、P=0.032)となり、ともにVF発生に対する有意かつ独立したリスク因子であった。

 遠藤氏は以上の結果を踏まえ、「EPA/AA比が低値だった群は高値群に比べ、30日死亡とVF発生のリスクが有意に高かった。また多変量解析の結果、EPA/AA比低値は両者の有意なリスク因子であった。したがって、急性期の予後を予測する有用なマーカーになり得るのではないか」と考察した。