昭和大学循環器内科の木庭新治氏

 冠動脈疾患患者における脂質低下療法で、脂質低下薬の内服に加え心臓リハビリテーションを併用すると、脂質プロファイルが顕著に改善することが示された。HDLの主要な構成成分であるApoA1や、抗動脈硬化作用のあるHDL2-コレステロール(HDL2-C)などは、脂質低下薬のみで治療した場合に比べ大幅に増加した。昭和大学循環器内科の木庭新治氏が、横浜で3月15日に開幕した第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 冠動脈疾患を対象として心臓リハビリテーションと通常治療を比較した48研究のメタ解析から、脂質に着目した研究をまとめると、総コレステロール量とトリグリセリド値は有意に低下、LDL-コレステロール(LDL-C)は低下傾向、HDL-Cは変化を示さなかったことが報告されている。

 また木庭氏らは以前、冠動脈造影を行った冠動脈疾患患者のうち、造影から6カ月後に血液検査を行えた197例に対し、冠動脈造影後に脂質低下薬を内服したか否か、心臓リハビリテーションを導入したか否かで4パターンに分類し、脂質値の変化を検討した。

 脂質低下薬の内服のみだったグループ、心臓リハビリテーションのみだったグループでもLDL-C値は低下したが、内服に加え心臓リハビリテーションを導入したグループはさらに大きく低下した。また、HDL-C値は内服のみだったグループ、内服に加えリハビリテーションを導入したグループでいずれもより増加した。small dense LDLコレステロール(sd LDL-C)値は、内服したグループでやや低下したが、心臓リハビリテーションのみだったグループ、内服とリハビリテーションを併用したグループではさらに低下した。sd LDL-C/HDL-C比は、内服のみのグループとリハビリテーションのみのグループでそれぞれ同程度低下したが、併用したグループでは著明に低下した。これらの結果から、脂質低下療法と心臓リハビリテーションの併用が有用であることが明らかになった。

 sd LDL-CやLarge VLDLなどのリポ蛋白の増加は動脈硬化を惹起しやすく、HDL2-Cなどのリポ蛋白の増加は抗動脈硬化作用がある。HDL3-Cは末梢からコレステロールを回収する小さなHDL-Cで、コレステロールをため込んで大きくなるとHDL2-Cとなる。HDL2-Cは、末梢から回収したコレステロールを多量に含み、肝臓で代謝させる大きなHDL-Cで、冠動脈疾患リスクの抑制に関連することが分かっている。脂質プロファイルは、運動することで動脈硬化惹起性から抗動脈硬化性に変わることが示されている。

 そこで今回木庭氏らは、男性急性冠症候群患者76例を対象とし、全例にスタチンを投与した。そのうち、45例は6カ月間心臓リハビリテーションに参加したスタチン+リハビリテーション群とした。スタチンのみ群の患者背景は年齢64.8歳、BMI23.8kg/m2、家族歴6.5%、現在喫煙率38.7%、高血圧67.7%、糖尿病12.9%だった。スタチン+リハビリテーション群は、年齢64.1歳、BMI23.4kg/m2、家族歴13.6%、現在喫煙率52.3%、高血圧80.0%、糖尿病31.1%だった。

 登録時と6カ月後に血液検査で脂質の状態を調査した。Large LDL-CはLDL-Cからsd LDL-Cを引いた値とした。ヘパリン/マンガン/デキストラン硫酸を用いた沈殿法を用いてHDL-Cから分離した小さいHDLをHDL3-Cとした。HDL2-CはHDL-CからHDL3-Cを引いたものとした。

 その結果、登録時と6カ月後の脂質プロファイルは、sd LDL-CとLarge LDL-Cが両群で有意に低下し、ともにLDL-Cは100mg/dL以下となった。Non HDL-Cも、両群とも顕著に低下し、135mg/dL以下となった。CRPは、スタチン+リハビリテーション群のみ有意に低下した。HDL-Cは両群とも増加傾向を示したものの有意差には至らなかった。ApoA1は、スタチン+リハビリテーション群のみ有意に増加した。HDL2-Cは、スタチン群では有意な増加にはならなかったが、スタチン+リハビリテーション群は、有意に上昇した(ここまで全てP<0.05)。HDL3-Cは、スタチン群では上昇傾向を、スタチン+リハビリテーション群では低下傾向を、それぞれ示した。

 これらの結果から木庭氏らは、「冠動脈疾患患者において、脂質低下療法と心臓リハビリテーションの併用は、sd LDL-Cの低下や大きなHDL-Cの増加など、動脈硬化惹起性のリポ蛋白プロファイルを著しく改善する」とまとめた。

■訂正
・3月19日に以下の訂正を行いました。
 記事中、「心臓マッサージ」と記述した部分がありましたが、「心臓リハビリテーション」の間違いでしたので訂正しました。