福岡東医療センター循環器科の島津秀樹氏

 一般内科または循環器内科を受診した479人を対象に、多施設共同でアンケート調査を実施した結果、非弁膜症性心房細動胃食道逆流症GERD)の有意なリスク因子だったことが示された。福岡東医療センター循環器科の島津秀樹氏が、3月15日に横浜で開幕した第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 GERDと心房細動は、「高齢化」「メタボリック症候群」など、共通の発症因子を持つ。そのため、2つの疾患の発症に関係性があるとする報告がいくつか存在する。過去には、GERD症状のある患者において、胃酸逆流回数の増加に伴い、心房細動の発生回数が増加したことが報告されていた。また、島津氏は、GERD患者にプロトンポンプ阻害薬を投与すると発作性心房細動の発生頻度が減少した症例を経験していた。

 そこで島津氏は、非弁膜症性心房細動とGERDとの間に強い関係があるとの仮説を立て、多施設へのアンケート調査によって検証した。

 対象は、九州大学病院とその近隣施設合計6施設において、一般内科や循環器内科の外来患者201人と健康診断受診者278人の合計479人(弁膜症性心房細動患者は除外)で、GERDのスクリーニングに用いられるFスケール問診票による調査を行った。Fスケール問診票には、GERD患者によく見られる12症状が記載されており、それぞれの症状について発症頻度を尋ねた。症状ごとに頻度(ない;0点、まれに;1点、時々;2点、しばしば;3点、いつも;4点)に応じた点数を把握し、12症状の合計点を算出。8点以上だった場合をGERDと診断した。

 Fスケール問診票の合計点は、年齢、性別、冠動脈疾患、高血圧(90/140mmHg以上または降圧薬服薬中)、糖尿病(空腹時血糖値126mg/dL以上、または随時血糖値200mg/dLまたはHbA1c値[JDS値]6.1%以上)、脂質異常症(LDLコレステロールが140mg/dL以上またはHDLコレステロールが40mg/dL未満)、非弁膜症性心房細動(外来にて診断または診療記録で確認)の罹患状況との関係を検討した。

 患者背景は、男性256人、女性223人で、平均年齢が60.4歳。外来患者201人と健康診断受診者278人の患者背景を比較すると、外来受診者における年齢とFスケール問診票の合計点は、健康診断受診者に比べて有意に高かったが(P<0.001)、GERD有病率は外来患者が8.5%、健康診断受診者は5.4%と有意差はなかった。

 疾患背景とFスケール合計点との関係を検討した結果、非弁膜症性心房細動と診断された88人の平均合計点は3.41点となり、非弁膜症性心房細動でない391人の1.60点と比べ、有意に高かった。同様に、冠動脈疾患あり、高血圧、脂質異常症ありの人についても、そうでない人と比べ有意に合計点が高かった。

 また、多変量解析でGERD発症(Fスケール問診票で8点以上)の有意なリスク因子を検討した結果、非弁膜症性心房細動のみが抽出された(P=0.004)。

 島津氏は、GERDと心房細動が互いに与える影響について考察し、GERDが心房細動に与える影響として、(1)食道穿孔ヘルニアによる左房の圧迫、(2)下部食道での持続的な炎症が局所の心膜炎や心房筋の炎症などを誘引、(3)インターロイキン(IL)-1βやIL-6など炎症性サイトカインの分泌、(4)持続した炎症が自己免疫反応(抗ミオシン重鎖抗体)を惹起――などを挙げた。また、心房細動がGERDに与える影響としては、拡大した左房が下部食道を刺激するという影響が考えられるとし、両者に共通する発症要因として迷走神経刺激を介する点を指摘した。

 今後の課題として島津氏は、「心房細動とGERDに因果関係があるということは報告されていても、互いにどのような影響を及ぼすかについての詳細はいまだ分かっていない。今後、より大規模なコホート研究による検討が必要」と指摘。GERDに対する薬物療法が、非弁膜症性心房細動にどのような影響を及ぼすかを調べるため、現在、介入研究を計画中であると語った。