岩手医科大学の高橋智弘氏

 岩手県の5医療圏の総合病院を対象に、2011年3月11日に発生した東日本大震災前後の急性心筋梗塞症、および急性心不全の発症状況を調べたところ、急性心筋梗塞症は震災直後の1週間に、一方、急性心不全は震災の3〜4週後に増加しており、それぞれの発症増加時期に違いが見られたことなどが明らかになった。3月15日に横浜で開幕した第77回日本循環器学会(JCS2013)で、岩手医科大学の高橋智弘氏らが発表した。

 調査疾患は、急性心筋梗塞症(WHO MONICA基準)と急性心不全(フラミンガム基準)の2疾患で、岩手県の被災地域である二戸、久慈、宮古、釜石、気仙の5医療圏の総合病院を対象に、病院診療録からデータを採録した。

 調査期間は、震災前の4週間(2011年2月11日から3月10日)と、震災後の8週間(2011年3月11日から5月5日)。また、2009年と2010年の上記と同時期のデータも調査した。

 その結果、急性心筋梗塞症と心不全のいずれもが震災の影響と見られる増加を示した。急性心筋梗塞症は震災直後の1週間に発症数が増加した(2009〜2010年の同時期6例/週 対 2011年12例/週)。これに対し、心不全の入院数は震災から3週間後に増加した(2009〜2010年の同時期14件/週 対 2011年31件/週)。

 また、津波による影響が大きかったことから、津波浸水地域と非浸水地域で比較したところ、急性心不全入院数の増加は、津波浸水地域で顕著で、増加のピークはやはり震災から3週間後だった。

 高橋氏は、急性心筋梗塞症と急性心不全で患者が増加する時期に違いが見られたことについて、「両疾患の発症増加の機序が異なっているためと考えられる。つまり、地震と津波による影響の中で、震災直後からの精神的ストレスによって交感神経の活性化が生じ、血圧の上昇、プラーク破裂、血栓の形成などを引き起こし、こうした急性効果が急性心筋梗塞症の発症を招いたと考えられる。一方、震災後の環境の変化によって、うつや不眠、呼吸器感染、食料や薬の喪失などが生じ、これらの慢性効果により心不全に至ったのではないかと考察される」と話した。

 今回の結果を踏まえて、震災直後の急性心筋梗塞症の対策について同氏は、「被災地で医療体制が破綻してしまった際には後方病院などへの搬送体制の確立、物品の備蓄などが重要である」と指摘。また、数週間後に増加する心不全については、「避難所などでの早期からの支援(環境整備や食品、医薬品、ストレス対策)のほか、服薬環境の悪化を防ぐために、処方箋の管理のクラウド化なども必要だ」と話した。