金沢大学大学院医学研究科脂質研究講座特任准教授の野原淳氏

 家族性高コレステロール血症FH)の原因の1つである前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型PCSK9)遺伝子の機能亢進型変異であるE32K変異は、家族性複合型高脂血症FCHL)の遺伝にも関連することが示された。FH患者とFCHL患者におけるPCSK9遺伝子のE32K変異の保有率が、健常者に比べて有意に高かった。金沢大学大学院医学研究科脂質研究講座特任准教授の野原淳氏が、横浜で3月15日に開幕した第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 代表的な遺伝性高脂血症の1つであるFCHLは、常染色体優性遺伝子疾患と考えられているが、根本的な因果関係はほとんど解明されていない。一方、PCSK9遺伝子のE32K変異は、FHの3番目の原因遺伝子として同定されている。PCSK9遺伝子E32K変異症例群における低比重リポ蛋白質コレステロール(LDL-C)値は、健常なコントロール群よりも高いが、低比重リポ蛋白質受容体(LDLR)遺伝子異常群よりは低値となることが報告されている。

 また以前、野原氏らは、日本人FH患者のPCSK9遺伝子にはE32Kが比較的共通していることを同定し、広範囲の脂質表現型の変異はLDL受容体遺伝子変異に匹敵することを発見している。そこで今回、野原氏らは、PCSK9がFCHLの遺伝的背景にも関与するかどうかを検討した。

 FCHL群(n=80)、臨床的にFHと診断されたclinical FH群(n=514)と、コントロール群(n=345)の3群からPCSK9遺伝子E32K変異を抽出した。全ての被験者とコントロール群は北陸地方の住民とした。FCHLは、(1)高脂血症がFredrickson分類でいうIIb型、IIa型またはIV型であること、(2)IIb型、IIa型またはIV型を有する第一度近親者、またはIIb型の家族が少なくとも1人はいること、(3)FHの可能性は除外されること、の3つの条件を満たした場合に診断した。

 その結果、PCSK9遺伝子E32K変異の頻度は、コントロール群(1.7%)に比べて、FCHL群(7.5%)、clinical FH群(6.2%)とも有意に高かった(いずれもP<0.05)。またFCHLにおいて、PCSK9 E32K変異ホモ接合体は重篤な高トリグリセリド血症を示した。FCHLにおけるE32Kヘテロ接合体5症例の平均脂質値は、TCが253±54mg/dL、TGは176±61mg/dL、HDL-Cは50±17mg/dL、LDL-Cが169±50mg/dLで、腱黄色腫は示さなかった。

 これらの結果から野原氏らは、「PCSK9遺伝子の機能獲得型変異はFHだけでなく、FCHLの遺伝的背景にも関連する」と結論し、今後は遺伝的変異が同様でも臨床表現型が異なることについての詳細な調査が必要になる、とまとめた。