肺うっ血を検出する機能が組み込まれた植込み型除細動器が、非代償性心不全の予測に有用である可能性が示された。植込み型除細動器を使用している患者を対象とした観察研究で明らかになったもので、弘前大学の佐々木真吾氏らが、3月18日まで福岡で開催された第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表した。

 佐々木氏らが検証したのは、米Medtronic社製の両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D:Cardiac Resynchronization Therapy Defibrillator)や通常の植込み型除細動器(ICD:Implantable Cardioverter Defibrillator)に付属する「OptiVol」と呼ばれる機能。胸腔内インピーダンス(交流信号に対する抵抗値)の変化を捉えることができる。肺に水分が貯留して電気伝導度が増すと胸腔内インピーダンスが下がるため、この機能によって肺うっ血の兆候を把握できる。

 OptiVolでは、インピーダンス低下の累積的な影響を表すOVFI(OptiVol Fluid Index)と呼ばれる指標を設定している。OVFIが高値を示すことは、肺うっ血が継続していることを意味する。

 佐々木氏らは、この機能を持つ植込み型デバイスを装着した患者を対象に、OVFIの変化と非代償性心不全イベントとの関連を検討した。対象は心臓突然死の1次/2次予防のためにCRT-DまたはICDを使用している構造的心疾患患者、連続100例(うち男性79例)。平均年齢は66歳、CRT-D使用者は46例、ICD使用者は54例だった。

 平均498日のフォローアップ期間中に746回のエピソードが記録された。そのうちOVFIのしきい値(OVFI=60)超えは229回(31%)あり、対象者の70%で検出された。

 OVFIの境界超えが記録された220エピソードについて、OVFIのパターンと非代償性心不全の頻度を解析したところ、78(35.4%)エピソードが非代償性心不全と判定された。なお、非代償性心不全は、心不全症状の増悪、X線による肺うっ血所見、血清BNPの上昇、のうち2項目以上がOVFIの境界超え30日以内に認められた場合と定義した。

 非代償性心不全と判定された47エピソード(HF+)と、そうでなかった141エピソード(HF−)のOVFIしきい値超えパターンの違いを解析した。その結果、OVFIがしきい値を超えてからピークに達するまでの日数は、HF+では22±9日で、HF−の10±9日に比べて有意に長かった(P<0.0001)。OVFIしきい値超えの持続期間もHF+では44±33日で、HF−の13±12日に比べて有意に長かった(P<0.0001)。

 またHF+のエピソードでは、ほとんどがピーク時にOVFI>181を記録していたが、HF−のエピソードでは60〜80が最も多かった。両群の平均ピーク値を比較すると、HF+の184.7±29.6に対し、HF−では94.2±30.7とほぼ半分で、両群間に有意差が認められた(P<0.0001)。これらの結果をもとに、OVFIによる代償性心不全の検出精度をROC曲線で解析したところ、OVFI=130で感度88.7%、特異度94.9%となった。

 佐々木氏は、「今回得られた解析の結果から、OVFIは非代償性心不全の同定と鑑別に有用と考えられる」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)