榊原記念病院(東京都府中市)の村上力氏

 東京都内のCCU施設を持つ67医療機関からなる「東京都CCUネットワーク」に、2010年の1年間に救急搬送された患者のうち、たこつぼ型心筋症例は0.5%だった。そのうち再発例は4.7%であり、約4割の症例では入院中に重大な心イベントを発症していたことが明らかになった。東京都CCUネットワーク学術委員会のメンバーである榊原記念病院(東京都府中市)の村上力氏が、たこつぼ型心筋症の臨床的特徴について、3月18日まで福岡で開催されていた第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表した。

 日本人のたこつぼ型心筋症に関しては、複数施設のデータによる多数例の報告は少ないのが現状だ。そこで村上氏は、東京都CCUネットワークに登録されたデータを基に、たこつぼ型心筋症例の臨床的特徴を検討した。対象は2010年1月1日から12月31日までの1年間に登録された、たこつぼ型心筋症例で、診断基準はMayo Criteriaを使用した。

 2010年の1年間に同ネットワーク参加施設に救急搬送された患者は2万3063人で、死亡例は5.3%だった。疾患別にみると、急性心不全が5326例(死亡6.7%)と最も多く、次いで急性心筋梗塞4653例(同6.0%)、狭心症2841例(同0.7%)だった。

 たこつぼ型心筋症は107例で、うち女性が82例(76.6%)、平均年齢は74歳、平均身長は153cm、平均体重は49kgだった。Apical Ballooning Typeが91.6%を占め、68.2%の症例で先行するストレスが確認された。再発例は5例(4.7%)だった。

 発症因子を検証したところ、ストレスなく発症した症例が一番多く32%、次が心的ストレスを契機に発症した症例で29%だった。

 搬送時の収縮期血圧は128±23mmHg、拡張期血圧は71±13mmHg 、心拍数は82±31拍/分、SpO2は96.0%で、全体では異常所見は特にないと考えられた。主訴としては、胸痛が54.2%、呼吸困難が34.6%だった。入院時の心電図所見では、ST上昇が73.8%、陰性T波が72.0%、QT延長が46.7%に認められた。

 入院時の検査データでは、クレアチンキナーゼ(CK)が338 IU/L、ピークCKは545 IU/Lと軽度の上昇がみられた。そのほか、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が656pg/mL、白血球数が9676/μL、CRPは2.19mg/dLで、上昇が認められた。

 たこつぼ型心筋症例の院内死亡は9例(8.4%)で、うち4例は心臓死(心不全、心原性脳梗塞、心原性ショック)によるものだった。5例は非心臓死だったが、ショックや心不全を合併している例が多く、たこつぼ型心筋症が影響している可能性が考えられた。なお、心臓死は搬送から1週間以内が多く、非心臓死は搬送から2カ月程度での死亡が多かった。

 入院中に重大な心イベント(全死亡、Killip分類がII〜IV、生命に関わる不整脈)を発症したのは41例、発症しなかった症例は66例だった。心イベントあり群は心イベントなし群と比べ、白血球数(1万1189/μL 対 9020 /μL)とBNP値(1125pg/mL 対 376 pg/mL)がともに有意に高かった。一方、LVEFは心イベントなし群が56.6%だったのに対して、心イベントあり群は49.3%と有意に低かった。

 たこつぼ型心筋症の発症に関連する因子についてロジスティック回帰分析で多変量解析を行ったところ、白血球数(中央値の9050/μL以上)とBNP値(中央値の203.7pg/mL以上)が有意な因子であることが分かった。ハザード比はそれぞれ2.523(95%信頼区間:1.05-6.06、P=0.039)、4.919(同:1.97-12.3、P=0.001)だった。

 村上氏は今回の結果から、「たこつぼ型心筋症患者の入院期間中に心合併症が起こることはまれではなく、多くの患者が亡くなっている実態が分かった」とし、今後、日本人患者を対象にしたさらなる長期の追跡が必要だとの見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)