福岡大学心臓・血管内科学の朔啓二郎氏

 生活習慣病患者を対象に、管理栄養士による「栄養指導」と適正カロリー・塩分を摂取する「宅配食」(提供食)を組み合わせることにより、2カ月間の短期間の介入で、減量とともに、血圧やグリコアルブミン値の改善が期待できることが示された。「スタイリスト研究」の成果で、福岡大学心臓・血管内科学の朔啓二郎氏らが、3月18日まで福岡で開催された第76回日本循環器学会(JCS2012)で報告した。

 スタイリスト研究は、経済産業省の「平成23年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業」の一環として行われた。無作為単盲検の多施設共同研究で、生活習慣病患者を対象に、在宅配食と栄養指導による生活習慣病の改善効果を検討した。

 対象は、2型糖尿病または境界型糖尿病を含む耐糖能異常(日本糖尿病学会の診断基準)、高血圧症(2009年の高血圧治療ガイドラインの診断基準)のいずれかを満たす20歳以上の症例で、規則正しく3食を摂取できる人。BMIが20kg/m2未満で身長148cm未満、一般食材にアレルギーのある人、試験期間中に生活習慣の変更や減量を予定している人などは除外した。

 食事については、参加者が日常食べている食事を日常食、コンビニエンスストア(コンビニ)から宅配、あるいはコンビニから持ち帰って食べてもらうものを提供食と定義した。

 この研究では、日常食を4週間食べた後、提供食を4週間食べる、という試験デザインとした。提供食を食べる期間中は、朝食は自由に食べてもらう一方、昼食と夕食はカロリーと塩分を適正とした食事をコンビニから提供し食べてもらった。一般に食事介入を行う研究では、参加者のコンプライアンスを維持することが難しいが、今回の研究は、外食が減って自宅で食事する、いわゆる内食や中食の機会が増えていることを背景に、コンビニで管理した食事を提供した。

 その上で、参加者200人を無作為に4群に割り付けた。「日常食・提供食の摂取だけで栄養指導なし」をA群、「日常食期間中のみ栄養指導を行い、提供食期間中は栄養指導なし」をB群、「日常食期間中の栄養指導はなく、提供食期間中のみ栄養指導あり」をC群、「日常食・提供食期間の両方で栄養指導あり」をD群とした。

 なお、提供食については、1200kcal用(昼食、夕食はそれぞれ400kcal)、1600kcal用(各533kcal)、1800kcal用(各600kcal)の3種類を用意し、被験者ごとに適正カロリーを算出して適正カロリーに近いものを食べてもらった。提供食のメニューは20種類で、各食事における塩分量は3g以下に設定した。

 栄養指導については、日常食あるいは提供食の開始時に栄養士が被験者と30分程度直接面談し、被験者の対象疾患に沿うかたちで、適正カロリーを守るための指導が行われた。面談2週間後には電話で10分間の栄養指導を行った。なお、直接面談の際に医師は同席せず、診察に影響しないよう栄養指導の有無については主治医に報告しなかった。

 主要評価項目は体重の変化、副次評価項目は収縮期・拡張期血圧、空腹時血糖、グリコアルブミン、HbA1c、LDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、トリグリセライド(TG)の変化。

 患者背景は各群間で有意差はなく、年齢は65歳前後、BMIは26〜27kg/m2前後、高血圧合併例が7〜8割、2型糖尿病合併例は4〜6割だった。各群ともに約8割が、食塩摂取量が1日10g以上だった。

 試験の結果、全参加者を対象に、日常食から提供食に切り替えた際の体重変化量を検討したところ、提供食を4週間摂取した後は体重が約0.6kg減少し、日常食中と比較して有意に低下した(P<0.01)。

 次に、栄養指導が体重変化に影響を与えるかを検討するため、栄養指導のなかった群(A群)と1度でも栄養指導のあった群(B、C、D群)に分けて解析した。その結果、栄養指導なし群では体重の有意な減少は見られなかったが、栄養指導あり群では提供食摂取開始時(試験開始4週目)から試験終了時(8週目)の間に有意に減少していた。

 副次評価項目のウエスト周囲径、収縮期・拡張期血圧、グリコアルブミン、HbA1cの変化では、各群間に有意差はなかった。それぞれの群について解析した結果、B群でHbA1cが、C群でウエスト周囲径とグリコアルブミン、HbA1cが、D群でウエスト周囲径、拡張期・収縮期血圧がそれぞれ研究開始時に比べ有意に低下していた。

 さらに、栄養指導なし群と栄養指導あり群に分けて解析したところ、栄養指導なし群に比べ、栄養指導あり群では体重、ウエスト周囲径、収縮期・拡張期血圧、グリコアルブミンのいずれも有意に改善し、栄養指導の効果が確認された。

 朔氏は本研究の留意点として、(1)BMIが20kg/m2以上が参加可能で、肥満症例のデータではないこと、(2)2カ月間と短期間での最小の介入であり、長期的な効果は分からないこと、(3)提供食の摂取率が6〜7割だったこと、などを挙げた。その上で、「栄養指導と提供食を組み合わせることは、生活習慣病の非薬物療法として有用」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)

■訂正
 3月23日に以下の訂正を行いました。
・1段落目に「栄養管理士」とありましたが、「管理栄養士」の誤りでした。お詫びして訂正します。