北海道大学循環器内科の眞茅みゆき氏

 心不全患者には、左室駆出率(LVEFまたはEF)が正常、あるいは十分に保持されている症例が数多く存在する。日本人の心不全患者を平均2年追跡した研究で、EF保持型の心不全ではEF低下型に比べて突然死が少なく、非心血管死が多いことが明らかになった。慢性心不全患者を対象とした観察研究であるJ-CARE-CARDthe Japanese Cardiac Registry of Heart Failure in Cardiology)のフォローアップ研究の成果で、北海道大学の眞茅みゆき氏らが、3月16日から18日まで福岡で開催された第76回日本循環器学会(JCS2012)で報告した。

 眞茅氏らは2009年に、J-CARE-CARDに登録された心不全患者のEFが5%から85%以上まで広汎に観察され、解析対象の26%が50%以上、16%が40〜50%のEFを保持していたことを報告している。今回の研究では、同レジストリーのフォローアップデータをもとに、EFが保持された心不全(HFpEF:Heart Failure with preserved EF)患者とEFが低下した心不全患者(HFrEF:Heart failure with reduced ejection fraction)の死亡様態を比較した。

 J-CARE-CARDでは、心不全による入院患者2675人を平均2.1年追跡した。追跡記録が得られた2305人のうち474人(20.6%)が死亡していた。この474例のうち死亡様態とLVEFが記録された323人(68%)を解析対象とした。

 本検討ではEF40%未満の154例をHFrEF群とし、EF40%以上の169例をHFpEF群とした。死亡様態は、突然死、心不全死、その他の心血管死、非心血管死、死因不明の5種類で判定した。

 患者背景では、HFpEF群はHFrEF群に対して高齢(78歳 対 73歳、P=0.001)で、男性が少なく(55% 対 71%、P=0.003)。左室拡張期末径(LV EDD)が有意に少なかった(51±10mm 対 62±11mm、P<0.001)。また、高血圧性疾患の合併は、28%対11%とHFpEF群で有意に高かった(P<0.001)。

 心不全以外の既往では、HFpEF群で高血圧、心房細動が有意に多く(P=0.001、P=0.006)、心不全発症前の心筋梗塞は有意に少なかった(P<0.001)。NYHA心機能クラス分類I/IIの割合は、HFpEF群(93%)がHFrEF群(81%)に比べて有意に高かった(P=0.002)。

 死亡様態は、全体では心不全による死亡が36%で最も多く、以下、非心血管死23%、突然死17%、死因不明14%、その他の心血管死10%の順だった。HFpEF群はHFrEF群に対し、突然死が有意に少なく(P=0.002)、非心血管死は有意に多かった(P=0.021)。心不全死、心筋梗塞死、脳血管死については両群に有意な差は認められなかった。

 今回の検討では、心不全患者の死亡様態は全体として心不全死が最も多いことが確認された。ただし、HFpEFでは非心血管死がより多く、HFrEFでは突然死がより多かった。眞茅氏は、「心不全患者の死亡の60〜70%は心血管関連と考えられる。対象の選択基準や死亡様態の識別法に検討の余地はあるが、HFpEFとHFrEFでは死亡様態が異なる可能性も示唆された。HFpEF例では非心血管死が多いことを念頭に置き、有効な治療戦略を再構築する必要がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)