冠攣縮性狭心症患者において、C反応性蛋白(CRP)にフィブリノーゲンを組み合わせると、心イベントをより鋭敏に予測できることが示された。日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科の小杉宗範氏らが、3月16日から18日まで福岡で開催されていた第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表した。

 冠攣縮性狭心症の予後規定因子としては、器質的冠動脈狭窄を有すること、多枝攣縮、喫煙、致死性の心室性不整脈の合併、心機能低下、カルシウム拮抗薬への抵抗性などが知られている。また、CRPは血管内皮細胞において一酸化窒素(NO)産生低下、血管収縮作用を持つエンドセリンの産生促進などの作用を有し、冠攣縮性狭心症の予後に悪影響を与えると考えられている。一方、フィブリノーゲンは、最近では動脈硬化の進展や心血管イベントの発症にも関与すると考えられている。実際、疫学調査で、健常者においてはフィブリノーゲンが高値であるほど心血管イベントが増えたといった報告もある。

 今回は、入院時にフィブリノーゲンとCRPを測定し、これが冠攣縮性狭心症患者の心イベント発症に影響するか、またフィブリノーゲンとCRPの組み合わせが心イベント発症の予測因子としての有用かを検討した。

 対象は、冠攣縮性狭心症と診断された662人(男性422人)、平均年齢は59±10歳だった。心イベントは、心臓突然死および急性冠症候群(ACS)による再入院と定義した。ACSは、硝酸薬を舌下投与しても緩解しない胸痛発作があり、診察時の心電図検査でST-T変化を認めた場合とした。

 心イベントは、平均追跡期間6.9年で67例(心臓突然死が13例、ACSによる再入院が54例)発生した。心イベント発生群と非発生群で患者背景を比較すると、発生群では年齢、心拍数、喫煙率が有意に高く、高血圧や不整脈の合併も有意に多かった。しかし、脂質異常症の合併は有意に少なかった。一方、性別、体格指数(BMI)、拡張期血圧、糖尿病の合併、多肢攣縮、左室駆出率には有意差は見られなかった。

 血液生化学所見を心イベント発生の有無別に比較すると、発生群では未発生群に比べ、白血球数、フィブリノーゲン、CRP、推算糸球体濾過量(eGFR)が有意に高値で、ヘモグロビン、HDL-コレステロール、トリグリセライドは有意に低値だった。なお、血小板、LDL-コレステロール、空腹時血糖、HbA1cは有意な差はなかった。また、フィブリノーゲンとCRPの間には有意な正の相関関係を認めた(P<0.001)。

 ROC曲線による解析から、心イベント回避のための最適カットオフ値はフィブリノーゲンが400mg/dL、CRPが0.3mg/dLと算出された。この数値を用いて、フィブリノーゲン<400mg/dL、CRP<0.3mg/dLをA群(412例)、フィブリノーゲン≧400mg/dL、CRP<0.3mg/dLをB群(53例)、フィブリノーゲン<400mg/dL、CRP≧0.3mg/dLをC群(109例)、フィブリノーゲン≧400mg/dL、CRP≧0.3mg/dLをD群(88例)と、4群に分けて心イベント発生率を比べると、D群は47.7%と有意に高かった。また、心イベント回避生存率をKaplan-Meier法で求めたところ、D群は有意に低かった。

 なお、この4群間で患者背景を比較すると、D群は高齢であり、喫煙率が高く、糖尿病の合併が多かった。同様に血液生化学所見を比較すると、D群は白血球数が高値で、ヘモグロビンやHDL-コレステロールが低値だった。

 多変量Cox回帰分析により心事故発生のハザード比を求めたところ、フィブリノーゲン400mg/dL以上は3.05(95%信頼区間:1.59-5.87、P=0.001)、CRP 0.3mg/dL以上は6.89(同:3.38-14.05、P<0.001)と、それぞれ独立した危険因子だった。さらに、これらを組み合わせて同様にハザード比を算出すると11.648(同:6.33-21.42、P<0.001)となり、より強い危険因子となった。

 以上の結果を踏まえ小杉氏は、「入院時にフィブリノーゲンを測定しCRPと組み合わせることで、冠攣縮性狭心症患者における心イベント発生の早期の指標になることが示唆された」と語った。

(日経メディカル別冊編集)