東北大学の高田剛史氏

 利尿薬を使用している心不全患者では、β遮断薬の使用などによる心拍の管理が生命予後の改善に関連することが示唆された。多施設共同前向きコホート研究「CHART-2」のデータをもとにした東北大学の高田剛史氏らの研究成果で、3月18日まで福岡で開催された第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表された。

 心不全患者ではうっ血の改善を目的として利尿薬が用いられるが、利尿薬は過剰な水分の排出を促す一方で血行動態に影響を与え、心拍数の上昇を引き起こす可能性があるとされる。

 約6500例の心不全患者に対して選択的心拍数低下療法の効果を検討したSHIFT研究(主要結果は2010年に発表)では、安静時心拍数が心不全患者の予後規定因子となることが報告されている。

 そこで高田氏らは、心不全患者における利尿薬の使用および心拍数と、生命予後との関連について、CHART-2研究の登録患者を対象に検討した。

 CHART-2研究は、心不全患者の予後を調査する目的のコホート観察研究で、冠動脈疾患を有するか、ACC/AHA慢性心不全診断治療ガイドラインのステージB〜Dに該当する東北6県の心不全患者1万219人を追跡している。高田氏らは、CHART-2の登録者のうち、心不全症状を有しないステージBの患者と心房細動を有する患者を除外し、洞調律が確認されたステージC/Dの2469例を検討対象とした。

 対象者を、心拍数<70で利尿薬非使用のグループ1(G1、620例)、心拍数≧70で利尿薬非使用のグループ2(G2、639例)、心拍数<70で利尿薬使用のグループ3(G3、530例)、心拍数≧70で利尿薬使用のグループ4(G4、680例)の4群に分けた。

 ベースラインの患者背景を比較すると、利尿薬使用群は非使用群に対し、年齢、NYHA、BNPが有意に高く、収縮期血圧、ヘモグロビン値、左室駆出率、eGFRが有意に低かった。

 総死亡について、Kaplan-Meier法でフォローアップ期間中の各群の予後を比較したところ、利尿薬非使用群では、心拍数70以上のG2群は70未満のG1群に対して有意に予後が悪く(P<0.001)、利尿薬使用群でも、心拍数70以上のG4群は心拍数70未満のG3群に対して有意に予後が悪かった(P<0.001)。

 また心拍数が70未満のG1群とG3群を比較すると利尿薬使用のG3群の予後が悪く、心拍数70以上のG2群とG4群でも利尿薬使用のG4群の予後が悪い傾向にあった。

 G1群の総死亡リスクを1とした時の他の各群のハザード比は、G2群が2.809(P=0.003)、G3群が3.267(P=0.001)、G4群が4.323(P<0.001)となり、心拍数70以上で利尿薬使用のG4群の予後は4群で最も悪かった。

 総死亡と患者背景因子をCox比例ハザードモデルで解析したところ、年齢、NYHA、LDLコレステロールの高値、ヘモグロビン、アルブミンの低値が有意な増悪因子として抽出された。これに対してβ遮断薬の使用は、総死亡リスクを有意に軽減する因子であることが示された(ハザード比:0.654、P=0.019)。

 β遮断薬の使用と総死亡の関連を利尿薬使用の有無で層別化すると、利尿薬を使用した群ではβ遮断薬の使用により総死亡が有意に減少したが、利尿薬非使用群では、そうした関連はみられなかった。

 利尿薬使用で心拍数が70以上のG4群のみで、Cox比例ハザードモデルにより総死亡と関連するリスク因子を求めたところ、β遮断薬の使用は総死亡リスクを有意に軽減した(ハザード比:0.641、P=0.047)。

 これらの結果から高田氏は、「利尿薬を使用している心不全患者において、β遮断薬の投与が生命予後を改善する可能性が示された。しかし、予後が最も悪いG4群でも半数しかβ遮断薬を使用していなかった」と指摘、「利尿薬を使用している心不全患者では、心拍の厳格なコントロールが求められる」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)