兵庫医科大学の増山理氏

 ループ利尿薬長時間作用型製剤が短時間作用型製剤に比べ、心不全患者の予後に対して、より優れた改善効果があることが報告された。長時間作用型利尿薬アゾセミドと短時間作用型利尿薬フロセミドを比較した臨床試験J-MELODIC(Japanese Multicenter Evaluation of Long- versus short-acting Diuretics In Congestive heart failure)の結果で、兵庫医科大学の増山理氏が、3月16日から18日に福岡で開催された第76回日本循環器学会(JCS2012)のLate Breaking Clinical Trialsセッションで発表した。

 日本の慢性心不全治療ガイドラインにおいて、利尿薬は収縮不全、拡張不全のいずれについてもクラス1の選択薬に位置付けられている。一方、観察研究ではあるものの、利尿薬投与が心不全患者の予後不良因子であるとの報告もある。その機序として、利尿薬投与による血圧や循環血液量の低下に伴い、血漿中のレニンやノルエピネフリン、バソプレシンなどの心刺激体液因子が活性化することの影響が推察されてきた。

 増山氏らは、利尿薬を使用する際、血圧、循環血液量、交感神経活性の変動が繰り返されることが予後に影響すると考えた。そこで、長時間作用型ループ利尿薬であれば、短時間作用型に比べて変動の波が緩やかになり、予後改善にも期待できるのではないかとの仮説を立て、「利尿薬のクラス効果に基づいた慢性心不全に対する効果的薬物療法の確立に関する多施設共同臨床研究」として、J-MELODICを開始した。

 対象はNYHA心機能クラス分類II/III度で、6カ月以内にフラミンガムの心不全診断基準を満たした症例とし、拡張不全も含めた。年齢は20歳以上。ループ利尿薬を使用しており、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ジギタリス、アルドステロン拮抗薬などによる標準治療を1カ月以上受けていることを基準とした。

 除外基準は、糖尿病および高血圧のコントロール不良、症候性の低血圧症、血清クレアチニン>2.5mg/dL、急性冠症候群、悪性疾患など循環器疾患以外の重症疾患などとした。

 2006年6月から2008年8月にかけ、上記の基準を満たすうっ血性心不全患者320例を登録した。検討は前向き無作為化オープンラベル結果遮蔽試験(PROBE)法を用い、対象患者をフロセミド40mg投与群(160例)とアゾセミド60mg投与群(160例)に無作為に割り付けた。8週間の調整期間を設けて各患者における用量調整を実施した上で、フォローアップを開始した。

 主要評価項目は、心血管死または心不全による予期せぬ入院。副次評価項目は、総死亡、心不全の悪化、BNPの30%以上の上昇、心不全による予期せぬ入院または治療の変更とした。

 フォローアップは1年ごとに実施し、最後の症例登録から2年後まで継続した。その間、治療拒否や患者希望による治療法変更などがあり、当初の割り付け通りに2年間のフォローアップを終えたのは、フロセミド群が133例、アゾセミド群が131例だった。しかし解析は320例全例を対象に実施した。

 年齢、男女の割合、喫煙習慣、NYHAクラス、SASスコア、血圧値、心拍などの患者背景には、両群間で差はなかった。使用薬物については、両群ともにACE阻害薬・ARBが約7割、β遮断薬が約5割、ジギタリスが約2割、アルドステロン拮抗薬とワルファリンが、ともに約4割で使用されていた。

 主要評価項目の心血管死または心不全による予期せぬ入院では、フロセミド群に対するアゾセミド群のハザード比が0.55(95%信頼区間:0.32-0.95、P=0.03)となり、45%の有意なリスク低減が示された。

 副次評価項目のうち、心不全による予期せぬ入院または治療の変更においても、フロセミド群に対するアゾセミド群のハザード比は0.60(95%信頼区間:0.36-0.99、P=0.048)となり、40%の有意な減少が示された。総死亡では両群間に有意な差を認めなかった。

 さらに脱落例を除いた解析では、アゾセミド群は主要評価項目のハザード比が0.47(95%信頼区間:0.26-0.83、P=0.01)、副次評価項目のうち心不全による予期せぬ入院または治療の変更で0.52(95%信頼区間:0.30-0.90、P=0.02)と、より著明かつ有意な効果が示された。

 安全性については、低カリウム血症、低血圧、ジギタリス毒性、発疹、関節炎などを数例認めたにとどまった。

 増山氏は、本検討において、アゾセミドが心血管死または心不全に伴う予期せぬ入院を減少させる可能性を示したことを踏まえ、「短時間作用型の利尿薬の長時間作用型への切り替えにより、うっ血性心不全患者の予後改善が期待できる」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)