川崎医大の今井孝一郎氏

 心房細動治療ガイドラインが2008年に改訂されたが、改訂の前後で患者の臨床転帰を比較したところ、改訂後、ワルファリン内服率がリスクカテゴリーに関わらず増加し、ハイリスク群においては脳梗塞発症率が減少したことが示された。3月16日から18日まで福岡で開催されていた第76回日本循環器学会(JCS2012)で、川崎医大の今井孝一郎氏らが発表した。

 日本人における脳梗塞の原因のうち、心原性脳塞栓が約27%を占めている。こうした背景から、2008年に心房細動治療ガイドラインは大幅に改訂され、抗血栓療法の重要性が改めて強調されると同時に抗血小板剤は削除され、ワルファリンのみが推奨されるに至った。

 この改訂がその後の臨床転帰に与えた影響を調べるため、改訂前の持続性心房細動の患者348人(2004〜2007年に登録、G1群)と改訂後の持続性心房細動の患者161人(2008〜2010年、G2群)の、合計509人について検討を行った。

 両群をCHADS2スコアにより、低リスク群(0点)、中等度リスク群(1点)、ハイリスク群(≧2点)に層別化し、それぞれについてワルファリンの使用率、脳梗塞、脳出血の発生率を調べた。観察期間は4年(中央値)。

 その結果、ワルファリン内服率はG1群(47%)に比べ、G2群(88%)で有意に増加し(P<0.001)、リスクカテゴリー別に見てもすべてのリスクグループで、改訂後にワルファリン内服率が増加した(P<0.05)。

 臨床転帰についてみると、脳梗塞/TIA発症率は、ハイリスク群においてはG1群に比べG2群で有意な減少を示した(P<0.05)。一方、低リスクおよび中等度リスク群では、改訂の前後で、有意差はなかったが、減少傾向は見られた。

 また、脳出血発生率は、すべてのリスクグループにおいて、改訂の前後で有意差は見られなかった。

 今井氏は、「ガイドラインの改訂により、ワルファリンの投与が増え、ハイリスク群についてはその妥当性が示されたが、低および中等度リスク群については今後のさらなる検討が必要だろう。また、2011年に抗血栓療法に新たにダビガトランが加わり、緊急ステートメントが出ているので、今後ダビガトランについても同様の調査を行うことも検討したい」と話した。

(日経メディカル別冊編集)