土田内科循環器科クリニック(新潟県長岡市)の土田桂蔵氏

 心房細動患者のBNP値を調べたところ、BNP高値群は低値群よりも心血管疾患(冠動脈疾患を除く)の発症率が有意に高く、特に発作性心房細動患者においてはCHADS2スコアが0または1でも、BNP値が高い場合には脳梗塞の発症率が高いことなどが示され、心房細動患者のリスクの層別化にBNP値が有用である可能性が示唆された。3月16日から18日まで福岡で開催されていた第76回日本循環器学会(JCS2012)で、土田内科循環器科クリニック(新潟県長岡市)の土田桂蔵氏が発表した。

 心血管疾患発症の予後に関してBNP値を検討した論文は、これまで心不全、一般住民、一般外来患者などについての報告がある。そこで今回は、心房細動患者におけるBNP値と心血管系イベントの発生率の関連を調べ、ワルファリン適応決定などの際にBNP値が有用なマーカーとなるかを検討した。

 対象は、土田内科循環器科クリニックの外来通院(1999〜2002年)の心房細動患者371人(平均年齢69.6歳、うち発作性231人、慢性140人)。

 これらの対象者を、患者のBNPの平均値(100pg/mL)で2群に分け、100pg/mL以上をBNP高値群、100pg/mL未満をBNP低値群とし、2006年末まで平均5.4年間追跡した。主要評価項目は、心血管イベントによる入院および死亡とした。

 その結果、心血管イベントは全体で96例発生し、BNP高値群の方がBNP低値群よりも有意に発生率が高かった(52%対15%、ハザード比:3.9、95%信頼区間:2.6−6.0、P<0.0001)。

 全死亡も、全体で80例発症し、同様にBNP高値群の方がBNP低値群よりも有意に発生率が高かった(42%対13%、ハザード比:2.3、95%信頼区間:1.4−3.7、P<0.0005)。そのほか心血管死(P<0.0001)、心不全(P<0.0001)、脳梗塞(P=0.0296)、発作性心房細動の慢性への移行(P<0.0098)などについても、BNP高値群の方がBNP低値群よりも有意に発生率が高かった。ただし、冠動脈疾患の発症には差が見られなかった。

 また発作性と慢性については、慢性の心房細動の方が発作性よりも脳梗塞発症率が有意に高いことが示された(15%対4%、ハザード比:3.9、95%信頼区間:2.6−6.0、P<0.0001)。

 この点について土田氏は、「非弁膜症性心房細動の脳梗塞発症は、発作性も持続性(慢性)も同じ頻度という報告が多い。今回は患者背景をそろえておらず、慢性心房細動群に弁膜症、心不全、脳卒中既往が多かったために、慢性心房細動の方が発作性心房細動より脳梗塞発症が多くなったと思われる。ただし、これが実際に外来に来られる心房細動患者の実臨床の成績でもある」と話す。

 慢性の心房細動患者においては、BNPの2群間で脳梗塞発症率に差は見られなかった。しかし、発作性心房細動患者においては、BNP高値群の方がBNP低値群よりも有意に脳梗塞発症率が高かった(13%対3%、ハザード比:4.2、95%信頼区間:1.2−14.4、P<0.0001)。

 そこで発作性心房細動患者をCHADS2スコア2以上と0〜1に分けて解析したところ、スコア2以上のグループではBNPの2群間で脳梗塞発症率に差はなかったが、スコア0〜1のグループではBNP高値群の方がBNP低値群よりも有意に脳梗塞発症率が高かった(17%対2%、P<0.0005)。

 これらの結果について土田氏は、「臨床で多く遭遇するCHADS2スコア1以下の発作性心房細動患者に対して、これまではワルファリン投与を強くは勧めにくいのが実情だった。しかし今後は、BNP値が100pg/mL以上の場合は、より説得力を持ってワルファリン投与を勧めることができるだろう」とコメントした。

(日経メディカル別冊編集)

■訂正
 3月21日に以下の訂正を行いました。
・第1段落2行目に「冠動脈疾患の発症率が有意に高く」とありましたが、正しくは「心血管疾患(冠動脈疾患を除く)の発症率が有意に高く」でした。お詫びして訂正します。また、6段落の最後に「ただし、冠動脈疾患の発症には差が見られなかった。」を追加しました。