熊本大学循環器内科の花岡洋右氏

 歯周病菌抗体価が高いと、歯周病リスクスコアだけでなく、収縮期血圧や脈波伝播速度(PWV)も高い傾向にあることが報告された。熊本大学循環器内科の花岡洋右氏らが、3月16日から18日まで福岡で開催されていた第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表した。

 歯周病はグラム陰性桿菌による慢性感染症であり、一方で炎症は動脈硬化の進行において重要な役割を果たす。歯周病と動脈硬化が関連するという報告は既にいくつかなされているが、今回、花岡氏らは歯周病と動脈硬化、高血圧との関係について検討した。

 対象は、急性冠症候群(ACS)患者40人、安定狭心症患者135人、冠攣縮性狭心症患者64人の計239人。歯周病の原因細菌の1つであるPrevotella intermediaの抗体価(Pi-IgG)は、採血した上でELISA法にて求めた。抗体価の中央値をカットオフ値とし、中央値以上のグループを高Pi-IgG群(平均年齢67.2±9.6歳、男性78人、女性37人)、中央値未満のグループを低Pi-IgG群(平均年齢67.0±9.4歳、男性73人、女性42人)とした。患者背景をみると、年齢、男女比、BMI、喫煙率、高血圧や糖尿病・耐糖能異常、脂質異常症の合併率などにおいて両群間に有意差はなかった。

 動脈硬化の指標としては、PWVと足関節上腕血圧比(ABI)を用いた。歯周病に関しては、以下の5つのリスク因子をそれぞれ0〜5点のスコアで評価し、その合計点を歯周病リスクスコアとした。(1)プロービング(歯周病ポケットを測る)時の出血率(0〜4%だった場合は0点、5〜9%で1点、10〜16%で2点、17〜25%で3点、26〜35%で4点、36%以上で5点)、(2)歯周ポケットが6mm以上の歯の数(0〜1本で0点、2〜3本で1点、4〜5本で2点、6〜7本で3点、8〜9本で4点、10本以上で5点)、(3)喪失歯の数(0本で0点、1〜2本で1点、3〜4本で2点、5〜6本で3点、7〜8本で4点、9本以上で5点)、(4)歯根長の2分の1以上の骨吸収を認める歯の率(0〜9%で0点、10〜19%で1点、20〜29%で2点、30〜39%で3点、40〜49%で4点、50%以上で5点)、(5)問診により調べた1年に喫煙するたばこの箱数(0箱で0点、1〜39箱で1点、40〜89箱で2点、90〜189箱で3点、190〜364箱で4点、365箱以上で5点)。

 解析の結果、高Pi-IgG群と低Pi-IgG群で、収縮期血圧とPWV、脈圧についてそれぞれ比較したところ、いずれの指標でも高Pi-IgG群で有意に高かった(順にP=0.0189、P=0.0101、P=0.0292)。また、高Pi-IgG群は低Pi-IgG群に比べ、歯周病リスクスコアが有意に高いことも分かった(P=0.0183)。

 一方、収縮期血圧とPWV、脈圧は、いずれも抗体価との相関傾向が認められた。抗体価と歯周病リスクスコアの間にも相関傾向を認め、さらに、脈圧と歯周病リスクスコア、ABIと歯周病リスクスコアの間にもそれぞれ相関傾向が認められた。

 これらの結果から花岡氏は、「歯周病は高血圧を引き起こすような動脈硬化と関連している可能性がある。歯周病を予防することによって、動脈硬化や高血圧の予防につながるのではないか」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)