藤田保健衛生大学循環器内科学の渡邉英一氏

 心臓植込み型デバイスに対する遠隔モニタリングシステムの有用性を検討した「J-HOME ICD」研究の結果から、同システムの診断精度は高く、無症候性イベントを早期に発見できる可能性が示された。藤田保健衛生大学循環器内科学の渡邉英一氏らが、3月16日から福岡で開催中の第76回日本循環器学会(JCS2012)で報告した。

 植込み型除細動器(ICD)や両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)は通常、定期的なフォローアップのために3カ月ごとに来院してもらい、プログラマーと呼ばれる専用のコンピューターを用いて不整脈の発生状況や種類、心拍変動や胸郭インピーダンスといった血行動態などに関する情報を解析している。一方、遠隔モニタリングシステムでは、そうした情報を遠隔で管理するのが特徴の1つ。デバイスの情報はデータ送信機によりサーバーに自動的に送られた後に解析され、その結果を電子メールの形で医師に送信することもできる。そのため、定期フォローアップの回数を減らせるだけでなく、不整脈イベントなどの有害事象を早期に発見できるとして期待されている。

 今回、渡邉氏らは心臓植込み型デバイス(ICD、CRT-D)を植込んだ症例を対象に、プログラマーを用いた対面診療による診断精度と、遠隔モニタリングによる診断精度を前向きに比較する臨床試験を41施設で行った。

 対象は、ICD/CRT-D移植のガイドライン基準を満たし、定期フォローアップのために来院できる215例(2009年5月から登録を始め、2011年11月にフォローアップを終了)。患者背景は平均年齢が62.4歳、男性比率が79.1%、冠動脈疾患罹患率が34.9%、左室駆出率が43.1%、使用デバイスはVVIタイプのICDが25例、DDDタイプのICDが115例、CRT-Dが75例だった。なお、経過観察中の打ち切り症例は36例で、そのうち13例が死亡、14例が同意撤回だった。

 デバイス植込み後、退院時にデータ送信機を自宅に設置してもらい、3カ月(±3週間)ごとに定期フォローアップを実施した。また異常発生時には、臨時フォローアップを行った。担当医は定期・臨時フォローアップ前(来院の0〜3日前以内)に、遠隔モニタリングデータを基に処置(検査、治療、入院など)が必要か否かを予測しておいた後で、外来診療でプログラマーを用いて再び解析した。

 本試験では、遠隔モニタリングによるフォローアップ前の評価(F/U前評価)とプログラマーを用いた外来診療による評価(F/U後評価)がどの程度一致するかを検討した。なかでも、F/U前評価で処置は不要と判断したものの、F/U後評価により処置を実施した「False Negative」の症例は臨床上、最も問題となる。つまり、「False Negative」が少ないほど遠隔モニタリングの診断精度は高くなるため、主要評価項目は全フォローアップにおける「False Negative」の割合とした。

 その結果、「False Negative」は3.3%(22回/663回)で、95%信頼区間は2.0%〜5.1%だった。

 副次的評価項目は、無症候性イベントの発見時期および遠隔モニタリングに対する患者受容度とした。具体的には、前者は遠隔モニタリングによりイベントが検出された日から定期フォローアップ日までの平均日数とし、どれくらい時間的な利益を得られたかの目安とした。後者は定期フォローアップの度に質問票を用いて把握した。

 結果を見ると、85例で840の無症候性イベントが発生しており、定期フォローアップ日よりも48.2±29.2日早く発見されたことが分かった。なお、無症候性イベントの内訳は、上室性頻脈が76.28%と大半を占めていた。また患者調査から、患者の97.7%が遠隔モニタリングシステムに対してポジティブな印象を持っていることが明らかになった。

 渡邉氏はこれらの結果を踏まえ、「心臓植込み型デバイスのフォローアップにおいて、遠隔モニタリングシステムの診断精度は高く、無症候性イベントを早期に発見できる上、患者受容度も高い」と結論した。さらに、同システムの活用により、個々の患者に適したフォローアップ計画が作成できるようになる可能性が示唆されたと語った。

(日経メディカル別冊編集)

■訂正
 3月21日に以下の訂正を行いました。
・4段落目に「使用デバイスはVVIタイプのペースメーカーが25例、DDDタイプのペースメーカーが115例」とありましたが、「使用デバイスはVVIタイプのICDが25例、DDDタイプのICDが115例」の誤りでした。お詫びして訂正します。