大阪市立大学の上田真喜子氏

 「医師にとって男・女による有利・不利がある」と感じている女性医師は、72%と高率であることが分かった。また、70%の女性医師は、「循環器医を続けていく上での困難を感じた」と回答した。日本循環器学会の会員である女性医師を対象に実施したアンケート調査で明らかになったもので、同学会の男女共同参画委員会副委員長を務める大阪市立大学の上田真喜子氏が、3月16日から福岡で開催中の第76回日本循環器学会(JCS2012)で報告した。

 日本循環器学会は、2010年に男女共同参画委員会(会長;平田健一・神戸大学)を新設。(1)循環器専門医を志す女性医師の増加を実現する、(2)女性循環器医師や研究者がキャリアを継続できるシステム、環境を構築する、(3)リーダーとなる医師を性差なく登用できるシステムを構築する、の3点を目標に委員会活動を開始した。

 委員会はまず、女性循環器医師の置かれている現状を把握し、問題点や要望を抽出する必要があると判断し、アンケート調査を実施した。

 調査は、学会登録先住所へアンケート用紙を送付し、記入後に返信用封筒を使って返送してもらう方法をとった。調査期間は2010年8月12日から9月28日。対象は、日本循環器学会の女性会員2651人。841人から回答が寄せられ、回収率は31.7%だった。

 調査で明らかになった回答者のプロフィールは、所属している日本循環器学会の支部でみると、関東甲信越が36.3%と最も多かった。近畿が20.1%、九州が13.3%と続いた。年齢は、30〜39歳が43.0%、40〜49歳が34.7%、50〜59歳が11.8%などとなっていた。勤務先の種類としては、「私立病院」が29.4%と最も多く、「診療所」が24.3%、「大学病院」が22.8%、「国公立自治体病院」が18.3%などだった。

 配偶者の有無については、「いる」が63.7%、「いない」が36.0%だった。子どもの有無では、「いる」が53.5%、「いない」が46.4%だった。

 循環器専門医の資格については、「循環器専門医である」が50.2%、「循環器専門医を取得準備中」が18.3%だった一方で、「医師だが専門医の取得予定はない」が27.1%もあった。

 現在の勤務状況をみると、「常勤職」が74.3%で最多だった。「非常勤職」が23.4%、「休職中」が4.6%、「出産休暇中」が2.4%、「育児休暇中」が1.4%、「介護休暇中」も0.1%、「退職」も0.6%あった。

 調査では、「女性循環器医師が仕事と子育ての両立を図る上で欠かせない3点セット」(上田氏)である保育所、病児保育、柔軟な勤務形態の現状についても尋ねた。

 その結果、職場に保育園または託児所があると回答したのは、44.7%(n=841)と半数に留まっていた。また、職場に病児保育制度があると回答したのは17.0%で、ほとんどの施設で未整備だった。

 一方、職場に子育て中の短時間勤務など柔軟な勤務形態があるかどうかについては、「ある」との回答が36.0%で、まだ十分に整備されているとは言えない状況だった。

 調査では、職場の女性医師に対する理解度についても明らかにしている。それによると、家庭や子どもを持つ女性医師に対して上司の理解が十分かどうかの質問では、「十分」との回答は33.7%に留まっていた。「不十分」が18.9%、「どちらともいえない」が34.2%だった(n=804)。同様に、同僚の理解についても尋ねているが、こちらも「十分」が31.2%に留まり、「不十分」が19.0%、「どちらともいえない」が36.9%となった(n=804)。

 「医師にとって男・女による有利・不利があると思うか」との質問には、「はい」が72.1%で、「いいえ」が17.9%だった(n=804)。加えて、循環器医を続けていく上で困難を感じたことがあるかどうかも尋ねているが、「はい」が69.8%もあり、女性医師が苦しい立場に置かれている現実が浮かび上がった。

 出産・育児期に仕事を続ける上で、どのような制度があれば良い(良かった)と思うのか、選択肢を用意し回答してもらったところ、「病児保育」が73.1%と最多だった(n=450、複数回答)。「勤務場所内保育所」が61.6%、「短時間勤務制度」が59.8%、「育児の場合に利用できるフレックスタイム制度」も56.9%あった。

 調査ではまた、妊娠・出産・育児に関わる勤務形態を整備する上で、日本循環器学会がサポートすべき事項を必要性の高い順に3つまで選んでもらっている(n=450)。その結果、「雇用形態(常勤・非常勤)の多様化を積極的に進める」が66.2%、「休業期間中、復職前後の教育研修制度」が44.7%、「出産・育児等退職者への再就職情報の提供」が36.2%で上位に並んだ。

 上田氏は調査結果から、女性循環器医師の実態がある程度は把握できたのではないかとの認識を示し、仕事と子育ての両立を図る上で「保育所、病児保育、柔軟な勤務形態」の3点セットの整備が望まれると指摘した。また、日本循環器学会としては、たとえば雇用形態の多様化の推進、学会・講習会の託児制度の充実、職場の意識啓発などのサポートを検討すべきとまとめた。

(日経メディカル別冊編集)