山形大学の門脇心平氏

 推算糸球体濾過量(eGFR)と尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に、尿中β2-ミクログロブリン/クレアチニン比(UBCR:urinary beta 2-microglobulin-creatinine ratio)を加えた3つの因子の総合的な評価が、慢性心不全患者の心イベントリスクの予測に有用である可能性が報告された。山形大学の門脇心平氏らが、3月16日から18日まで、福岡市で開催されている第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表した。

 腎機能障害は、慢性心不全患者の予後不良のリスク因子であることが知られている。腎機能の評価では、eGFRやUACRなどの糸球体障害に関連するパラメータは汎用されるが、UBCRについては、高値が尿細管障害を予測することが示唆されながら、心イベントに対する影響については十分に明らかにされていなかった。

 そこで門脇氏らは、eGFRとUACR、UBCRを用いて、慢性心不全患者の心イベント発症リスクの層別化が可能かどうかを検討した。対象は2008年1月1日から12月31日の間に自施設に入院した慢性心不全患者200例(男性113例、女性87例)。評価項目を心臓突然死と心不全悪化による再入院とし、前向きに追跡した。各患者には入院時に血液、尿、心エコー各検査を実施し、検査値をもとにeGFR<60mL/min/1.73m2、UACR>30mg/g、UBCR>300μg/gをそれぞれ1ポイントとし、合計ポイント(0-3)と予後の関連を調べた。追跡期間の中央値は310日(126〜516日)。急性冠症候群と酸性尿症(pH<5.5)を呈した患者は除外した。

 経過観察中、50例に心イベント(心臓突然死10例、心不全悪化による再入院40例)を認めた。心イベントを発症した患者群は発症しなかった群に比べて、年齢、NYHA心機能分類での重症例(クラス3、4)の割合、利尿薬の使用、BNP、UACR、UBCRがそれぞれ有意に高く(それぞれP=0.0009、P=0.0005、P=0.0054、P=0.0474、P=0.0357、P=0.0066)、eGFRは有意に低かった(P=0.0011)。

 以上の結果をもとに、心イベントリスクを単変量解析したところ、年齢、NYHA心機能分類での重症例、BNP、eGFR<60mL/min/1.73m2、UBCR>300μg/gが有意な関連を示した。そこでこれらの因子について多変量解析を行ったところ、年齢(ハザード比[HR]:1.035、95%信頼区間[CI]:1.003-1.068、P=0.0294)、NYHA心機能分類での重症(HR:2.217、95%CI:1.196-4.113、P=0.0115)、eGFR<60mL/min/1.73m2(HR:2.441、95%CI:1.252-4.758、P=0.0088)、UBCR>300μg/g(HR:2.095、95%CI:1.090-4.026、P=0.0264)が、それぞれ独立なリスク因子として抽出された。

 さらに、eGFR<60mL/min/1.73m2、UACR>30mg/g、UBCR>300μg/gに基づいたリスクポイント別に、Kaplan-Meier法で心イベントフリー生存率を解析したところ、ポイントが1、2、3の各群の心イベント発症率はポイント0群に対し、それぞれ6.6倍、10.1倍、15.2倍であることが示された。

 門脇氏は以上の結果から、「eGFR、UACR、UBCRに基づいたリスク評価は、心不全患者の予後の適切な予測を可能にすると考えられる。特にUBCRが高値になるとGFRが低下しやすいとの報告もあるため、UBCRは早期からの予測パラメータになりうるのではないか」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)