福島県立医科大学循環器・血液内科学の義久精臣氏

 睡眠呼吸障害(SDB)を合併した心不全患者に対し心臓再同期療法(CRT)を行うと、心機能の改善はみられるものの、SDBはそれほど改善されないことが分かった。福島県立医科大学循環器・血液内科学の義久精臣氏らが、3月16日に福岡で開幕した第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表した。

 心不全患者ではSDB、なかでもチェーン・ストークス呼吸(CSR)がよくみられる。また、CRTは心不全の治療法として有用であるとされているが、CRTがSDBを改善するかどうかは明らかにされていない。そこで義久氏らは、心不全例において、CRT施行前後のさまざまなパラメーターの変化について検討した。

 対象は、中等症あるいは重症のSDBを合併した心不全患者で、CRTを植込む予定がある17例。患者背景をみると、平均年齢は63.1±12.6歳、男性は16例(94.1%)だった。原疾患は心筋症(11例)が最も多かった。投与薬剤については、ACE阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は15例(88.2%)、βブロッカーと利尿薬はともに17例(100%)に処方されており、標準的な薬物治療は十分に行われていた。推算糸球体濾過量(eGFR)は47.4±19.0mL/min/1.73m2で、慢性腎臓病(CKD)の患者も含まれていた。心房細動を合併していたのは10例(58.8%)だった。

 CRT施行前と施行6カ月後に、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)計測、心エコー検査、終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)検査などを実施した。BNP値は、施行前には605.3±456.5pg/mLであったが、6カ月後は370.0±394.6pg/mLと、有意に低下していた(P<0.01)。QRS幅は165.2±23.5ミリ秒から140.5±21.6ミリ秒と、有意に短縮していた(P<0.05)。左室拡張末期容積(LVEDV)は188.8±75.5mLから170.6±64.0mL、左室収縮末期容積(LVESV)が138.8±62.1mLから123.9±55.7mLと、どちらも有意に低下した(いずれもP<0.05)。なお、LVEDV、LVESVがともに低下したため、左室駆出率(LVEF)は28.5±9.9%から28.6±10.3%と、有意差はなかった。

 呼吸関連パラメーターのCRT施行前後における変化をみると、AHI(無呼吸低呼吸指数)、CAI(中枢性無呼吸指数)、OAI(閉塞性無呼吸指数)はいずれも低下傾向にあったが、有意な変化には至らなかった。また、CRTのレスポンダー(LVESVの15%以上の減少例)は8例(47.1%)だった。CRT施行前後におけるSDBタイプの変化をみると、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)から変化しなかった例が23.5%(うちレスポンダーは25%)、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)から変化しなかった例が17.6%(同66.7%)、CSAからOSAに変化した例が29.4%(同20%)、OSAがCSAに変化した例は29.4%(同80%)だった。つまり、レスポンダーであればCSAが必ず消失するわけではなかった。

 これらの結果から義久氏は、「CRTにより心機能の改善は認められるものの、SDBは全例に残存した」と述べた。そこで同氏は、「CRTは標準的な治療としてSDB治療よりも先行して行うことが勧められているが、実際には多くの例でSDBが改善しない。SDBに対する治療も同時並行で行う必要があるのではないか」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)