京大大学院EBM研究センターの上嶋健治氏

 日本人ハイリスク高血圧患者を対象としたCASE-J試験の参加患者をコホートとしてサブ解析を行った結果、糖尿病を合併した高齢の高血圧患者の至適血圧は130/85mmHg未満で、拡張期血圧を75mmHg未満に下げると心疾患イベントのリスクが増大する可能性があることなどが示唆された。3月16日から福岡で開催されている第76回日本循環器学会(JCS2012)で京大大学院EBM研究センター上嶋健治氏らが発表した。

 多くの高血圧ガイドラインにおいては、高齢の高血圧患者の降圧目標は140/90mmHg未満とし、糖尿病合併高血圧患者の降圧目標は130/80mmHg未満を推奨している。

 しかし、日常診療で多く遭遇する糖尿病で高齢の高血圧患者の降圧目標は不明だ。そこで、CASE-J試験参加者のうち65歳以上の高齢者2377人(平均年齢72.0歳)をコホートとし、糖尿病合併群(1031人)と合併なし群(1346人)に分けて心血管系イベントの発症率を検討した。

 3.2年の追跡で、心血管系イベントの累積発症率は、糖尿病の合併群で9.6%、合併なし群で5.7%で有意に合併群の方が高かった(調整後ハザード比:2.18、95%信頼区間:1.65−2.88、P<0.001)。

 心血管系イベントの発症リスクについて収縮期血圧でみると、糖尿病の合併なし群では収縮期血圧140mmHg未満、合併群では130mmHg未満でそれぞれ発症リスクが減少した。しかし、合併群は合併なし群と比較するとリスク低下の効果が減弱だった(交互作用P=0.006)。

 一方、拡張期血圧については、糖尿病合併群も合併なし群も、85mmHgまでは低いほど心血管系イベントの発症リスクが低下した。しかし、糖尿病合併群では拡張期血圧が75mmHg未満になるとJ-shape現象がみられ、発症リスクが上昇した。

 これらの結果から上嶋氏は、「今回のサブ解析によって糖尿病合併の高齢高血圧患者の至適血圧は130/85mmHg未満と推測され、ガイドラインの〔糖尿病合併〕の降圧目標に近いことが示された。拡張期血圧75mmHg未満ではJ-shape現象が見られリスクが増加する可能性も示唆された。しかし、CASE-J試験自体は至適血圧の推定を目的としていないため、75mmHg未満の症例数が不十分な可能性がある。J-shape現象については、実施が難しいが、より低めの目標血圧を設定した前向き研究でのさらなる検討が必要だろう」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)