国立循環器病研究センターの横山広行氏

 わが国でも、循環器領域におけるマルチスライスCTMDCT)を用いた検査が急速に普及していることが明らかになった。日本循環器学会が実施している循環器疾患診療実態調査の結果、MDCTの実施施設は2007年から2010年で1.4倍に、実施件数は2.2倍に急増していた。国立循環器病研究センターの横山広行氏が、3月16日に福岡で開幕した第76回日本循環器学会(JCS2012)で発表した。

 米国では2006年から2007年にかけてMDCTが112%増加したという。並行して、心筋血流SPECTが減少したことも分かっている。つまり、MDCTが増加すれば心筋血流SPECTは減少することが示唆されるわけだが、わが国における動向は不明だった。

 そこで横山氏らは、日本循環器学会が実施している循環器疾患診療実態調査をもとに、MDCT実施件数の推移と冠動脈疾患の診断・治療の方法がどのように変化したのかを検討した。

 対象は、2007年から2010年に循環器疾患診療実態調査に回答した循環器研修施設・研修関連施設のデータ。各年の回答数と回答率は、2007年が1147件、92.7%、2008年が1128件、91.5%、2009年が1136件、90.2%、2010年が1236件、98.1%だった。

 この間、回答した施設の背景としては、ベッド数、循環器疾患のためのベッド数、循環器医の数などに大きな変動はなかった。また、急性心筋梗塞の患者数においても、著しい変動は見られなかった。

 注目したMDCTの実施件数は、2007年が714施設で14万5477件、2008年は807施設で20万6430件、2009年は876施設で25万3013件、2010年は1027施設で32万4658件だった。この間、MDCTの実施施設は1.4倍に、実施件数は2.2倍に急増していた。MDCTの実施施設は全国的に広がっており、地域的な偏りは見られなかった。また、病床の規模にかかわらず実施件数が増加していることも分かった。

 そこで横山氏らは、2007年から2010年の4年連続で循環器診療実態調査に回答した942施設を対象に、MDCT、トレッドミル運動負荷試験、運動負荷心筋シンチグラフィ、薬物負荷心筋シンチグラフィ、冠動脈造影検査について実施件数の推移を解析した。

 その結果、multinomial logit modelによって解析したところ、MDCT検査の実施件数に対して、トレッドミル運動負荷試験、運動負荷心筋シンチグラフィの実施件数は有意に減少していた。また、実施割合でみたところ、2007年を基準とした場合、MDCT検査に対する各検査の実施割合は、それぞれ減少していることが分かった。

 MDCT実施件数が増加する一方で、運動負荷試験が減少した理由として、横山氏らは、(1)胸部症状を有する患者で運動が可能な場合に、運動負荷試験をスキップした、(2)胸部症状を有する患者が救急を受診した際にMDCTを実施した、(3)検診でのMDCT実施が増加した、の3点が考えられると指摘した。

 講演の最後に横山氏は、今後は循環器疾患診療実態調査のデータを活用し、循環器疾患の診療と治療に関して、日本循環器学会から行政に対する提言を行い、あるいは一般市民や世界に対し情報発信を進めていくことが期待される、と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)