東京大学臨床疫学システム講座の鈴木信也氏

 CHADS2スコアは、心房細動(AF)患者の血栓リスクを良好に反映する指標として、近年普及してきた。このCHADS2スコアに慢性腎不全CKD)の有無を組み合わせて層別化することにより、AF患者の死亡リスクを予測するツールとして使える可能性が示された。東京大学臨床疫学システム講座の鈴木信也氏らが、3月5日から京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会にて報告した。

 CHADS2スコアは、Congestive heart failure(心不全)、Hypertension(高血圧)、Age(年齢;75歳以上)、Diabetes(糖尿病)、Stroke(脳卒中)の頭文字をとったもの。C・H・A・Dの項目に該当すれば各1点、Sの既往があれば2点とカウントし、合計スコアが0点なら血栓塞栓症を生じるリスクは低く、1-2点なら中等度リスク、3点以上は高リスクと評価される。

 鈴木氏らは、今回の発表に先立ちCHADS2スコアは血栓塞栓症だけでなく死亡リスクとも相関することを見出している。そこで同スコアにCKDの有無という新たな基準を組み合わせることにより、さらに予測精度が向上するのではないかと鈴木氏らは考え、今回の解析を行った。

 対象は、2004-2008年の間に心臓血管研究所が構築する「Shinken Database」に登録された心房細動患者1578例。鈴木氏は、これらの患者をCHADS2スコアによって5つのグループ(0、1、2、3、4以上)に層別化するとともに、CKDの有無によって2群に分類し、それぞれのグループ・群別の死亡率ならびに死亡原因を調べた。

 なお、CKDのある群(n=419)とない群(n=1159)では、前者のほうが高齢(70.1歳 vs 60.7歳)、BNPが高値(504.2pg/nL vs 178.1pg/nL)、NYHA≧III度の人の割合(17.7% vs 3.1%)という違いがみられた(すべてp<0.001)。血圧およびHbA1c値に両群間に有意な差はみられなかった。

 解析の結果、CHADS2スコアが増加するに従って死亡率は増加した。また、すべてのスコアグループにおいて、CKDのある群のほうがない群より死亡率が高率であった。

 それぞれのグループ・群における死亡原因をみると、CKDのある群ではCHADS2スコア1または2の比較的低い層に心不全死が多くみられた。脳卒中、血栓塞栓症による死亡は、CKDのない群ではCHADS2スコア≧4のグループに多くみられたのに対し、CKDのある群ではCHADS2スコア3のグループでの発生が最も多かった。

 以上の結果から、CHADS2スコアにCKDの有無を組み合わせた二元的なスケールはAF患者の死亡リスクを良好に反映すること、CKDのある群では、CKDのない群と同じCHADS2スコアであっても死亡リスクは高いことが示唆された。鈴木氏は、「CKDのある患者は、比較的低いCHADS2スコアであっても細心の注意を払い、ARBの投与など積極的な治療を考えるべきであろう」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)