琉球大学第二内科の島袋充生氏

 内臓肥満はメタボリックシンドローム(MetS)の基盤となる病態で、他の危険因子の「呼び水」となって動脈硬化のリスク集積を促進する。琉球大学第二内科の島袋充生氏らは、αグルコシダーゼ阻害薬α-GI)ミグリトールが内臓肥満の改善に働くことを、3月5日から京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会にて報告した。

 α-GIは腸管での糖吸収を遅れさせて、食後の急激な血糖上昇を抑える。島袋氏らは、α-GI投与によって食後高血糖が改善して過剰なインスリン分泌を抑える可能性があり、内臓脂肪の蓄積も抑制されるのではないかと推測。その仮説を検証するため、ミグリトール投与と非投与との比較試験を計画した。

 対象は、薬物療法を受けていないMetS患者85例。島袋氏は、これらの患者を2群に分け、一方には生活習慣の改善を指導し(LSM群;n=43)、もう一方には生活習慣の指導に加えてミグリトール(50mg×3/日)による薬物治療を行った(ミグリトール群;n=42)。全例に標準的なダイエットと運動指導を行っている。両群の治療前および12週間後の糖・脂質代謝パラメータや75g経口糖負荷試験(OGTT)データ、臍部CT画像上の内臓脂肪面積、血圧、体重、BMI、腹囲等の変化を比較した。

 その結果、LSM群のOGTTデータには治療前後で有意な変化は認められなかったが、ミグリトール群ではベースライン時に比べて12週後は負荷後の血糖上昇およびインスリン上昇が有意に抑制されていた(いずれもp<0.01)。また、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR値はミグリトール群でのみ有意に低下していた(p<0.05)。

 また、ミグリトール群ではHbA1c値と総コレステロール値、中性脂肪値の有意な低下が認められたが、こうした変化はLSM群では認められなかった。体重、BMI、腹囲は両群ともにベースライン時より減少していたが、減少の程度はLSM群よりミグリトール群のほうが大きかった。特に、体重については約5kgもの減少(73±11kg→68±10kg)が認められた。島袋氏によると、「抗肥満薬に匹敵する効果」だという。

 同様に、臍部CT画像上の内臓脂肪面積は両群とも有意に減少していたが、減少の程度はミグリトール群のほうが有意に大きかった(ミグリトール群188cm2→161cm2;p<0.0001、LSM群184cm2→174cm2;p<0.048)。さらに、ミグリトール群では収縮期血圧の有意な低下も認められた(142mmHg→133mmHg;p<0.001)。

 これらの結果から、12週間のミグリトール治療はMetS患者の耐糖能とインスリン抵抗性を有意に改善すると同時に、内臓肥満を改善して体重やBMIの減少をもたらすことが示された。

 島袋氏は、「MetSの基盤である内臓肥満が、ミグリトール投与によって改善されるのであれば、インスリン抵抗性と耐糖能のさらなる改善が望めるのみならず、代謝異常や血行動態異常なども含めた動脈硬化リスクの総合的な改善も期待できるかもしれない」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)