心臓血管研究所の山下武志氏

 高血圧を伴う発作性心房細動に対する発作発生・進展抑制効果は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬(CCB)で同等であることが確認された。3月5日から開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会のLate Breaking Clinical Trialsで、心臓血管研究所の山下武志氏が発表した。

 これまでに心房細動(AF)において、心房の障害変化などを抑制することによって予後を改善するというアップストリーム治療の概念が提唱され、RA系阻害薬が有効である可能性が示唆されてきた。

 昨年海外で発表された2つの臨床試験では、持続性AFに対するARBの追加投与はAFの再発に対して対照群と差がないことが示されたが、発作性AFに対するRA系阻害薬の有効性については評価されていない。日本ではAF患者の半数以上が高血圧を合併しており、降圧薬のうちRA系阻害薬がどのように影響を与えているかは明らかとなっていない。

 そこで、日本心電学会が中心となって、J-RHYTHM II 試験が計画され、今学会で結果が発表された。

 J-RHYTHM II 試験の対象は高血圧(収縮期血圧≧140mmHg、拡張期血圧≧90mmHg)を有する発作性AF患者。持続性AFおよび永続性AF患者は除外した。ARBカンデサルタン(8〜12mg/日)を投与する群とCa拮抗薬アムロジピン(2.5〜5mg/日)を投与する群に割り付け、最大1年間追跡した。患者から伝送心電図のデータを毎日送信され、発作回数(発作日数)のデータを蓄積した。

 主要評価項目は、登録時で薬剤投与前の1カ月間の発作日数とフォローアップ期間最終の1カ月間の発作日数との差とした。

 326例が登録され、最終的にフォローアップできたのは318例。ARB群は158例、CCB群は160例だった。

 登録時の患者背景には両群に有意な差はなく、男性が7割弱、平均年齢65歳、収縮期血圧140mmHg/拡張期血圧80mmHg程度で、登録時に7割以上が降圧薬や抗不整脈薬を服用していた。糖尿病合併例は15%程度。左室拡張末期径(LVDd)には両群間で有意な差はなかったが、左室収縮末期径(LVDs)はARB群が有意に小さく、左室駆出率(LVEF)はCCB群が有意に小さかった。BNP値には有意差はなかった。

 登録時のAFの発生日数は、両群とも1カ月あたり平均4回、有症状AFは1カ月あたり平均1.5回程度で、有意な差は認められなかった。

 フォローアップ期間中の血圧の推移には両群間で有意な差があり、期間中、一貫してCCB群の方が血圧が低かった。

 そしてAFの発生日数については、ARB群、CCB群ともに観察期間の最終1カ月のAF発生回数は登録時のAFの発生回数よりも減少していた。しかし、ARB群とCCB群の間のAF発生日数に有意な差はなく、ARBカンデサルタンとCCBアムロジピンは発作性AFを同程度に抑制できることが示された。1年間を通して評価しても、両群ともに徐々にAF発生日数を減少させたが、2群間に有意な差は認められなかった。

 副次評価項目として設定された、発作性AFの慢性化については、ARB群で145例中13例(10%弱)に対してCCB群では136例中24例(15%強)が慢性化しており、ARB群の方が慢性化を抑制する傾向はあったが、有意差は認められなかった(p=0.08)。

 また、左房径について2群間に有意差はなかった。症状の頻度や不安感、日常生活の制限などQOLについては登録時に比べて改善していたが2群間で差は認められなかった。

 ARB群とCCB群でフォローアップ期間中の血圧に有意差が認められたため、最終的に到達した収縮期血圧によって3つのサブグループに分けてpost-hoc解析を行った。各血圧グループにおいて、両群いずれもAFの発生日数は減少していたが、両群間に有意な差は認められなかった。

 これらの結果から山下氏は、「高血圧を合併する発作性心房細動患者を対象としたJ-RHYTHM II 試験においては、ARB群とCCB群の間で到達できた血圧に差があり、こうした条件の中で1カ月あたりの有症状、無症状のAF発作日数に有意な差はなく、慢性化の抑制効果にも有意な差はなかったとまとめた。そして、ARBカンデサルタンおよびCCBアムロジピンを使った血圧管理は発作性心房細動を同程度に抑制しうると結論した。

 また山下氏は、現時点でJ-RHYTHM II 試験の結果で最も注目すべきこととして、これまでの臨床試験などから発作性AFの慢性化は年間5%とされてきたが、慢性化は予想以上に多いことが明らかになったことを挙げた。

(日経メディカル別冊編集)