奈良県立医科大学の斎藤能彦氏

 eGFRが60〜89(mL/分/1.73m2)という腎機能が軽度に低下した2型糖尿病患者では、低用量アスピリンが心血管イベントの一次予防に有効であることが示された。3月5日から京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会で、奈良県立医科大学の斎藤能彦氏が報告した。

 今回の報告はJPADThe Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis with Aspirin for Diabetes)試験のサブ解析によるもの。JPADは2型糖尿病患者の心血管イベント一次予防に低用量アスピリンが有効か否かを調べた臨床試験で、163施設から2539人の2型糖尿病患者が参加。一次エンドポイントを心血管イベントとしたが、アスピリン(81mgまたは100mg)による有意な効果は認められなかった。これまで、年齢、性別、高血圧、脂質異常症、喫煙歴で被験者を分けたサブ解析が行われているが、アスピリンの有意な効果が確認されたのは「65歳以上」の集団のみだった。

 斎藤氏らは、JPADに参加した2型糖尿病患者2523人をeGFRの値に応じて3つのサブグループに分類。eGFRが「90mL/分/m2以上」(518人)、「60〜89mL/分/m2」(1373人)、「60mL/分/m2未満」(632人)のそれぞれのグループで低用量アスピリンの心血管イベント一次予防効果を解析した。血圧値、血糖値は各グループにおいて、アスピリン群と非アスピリン群で有意な差はなかった。

 心血管イベントの発生率をeGFRのサブグループ間で比較すると、90以上のグループに対し、60〜89、60未満では有意に増加していた(ハザード比はそれぞれ1.6、2.0)。

 eGFRの各サブグループでアスピリンの心血管イベント予防効果を調べると、60〜89のグループではアスピリン群の心血管イベントは非アスピリン群より有意に減少していた(ハザード比0.57、95%信頼区間0.36-0.88、p=0.011)。90以上のグループでは両群に有意な差はみられず(0.94、0.38-2.27、p=0.89)、60未満のグループではアスピリン群の方がイベント発生率が高い傾向にあるものの、有意な差はなかった(1.34、0.76-2.24、p=0.32)。

 年齢とeGFRでサブグループに分けると、65歳以上かつeGFR 60〜89のグループではアスピリン群のハザード比は0.48(0.27-0.82)となり、低用量アスピリン投与の効果が非常に期待できるとした。

 なお、eGFR 60〜89のグループにおける消化管出血、脳出血の発生率については、アスピリン群と非アスピリン群の間に有意な差はなかった。

 これらの結果から斎藤氏は、「糖尿病コントロールにおいて、eGFRによる層別化も積極的に考慮する必要がある」と結論。eGFR 60未満のグループでアスピリン群の心血管イベントが増えた理由については、「アスピリンの投与量が足りないか、アスピリンが作用しない部分の障害が腎機能の低下とともに進んでいる可能性がある。GFR軽度低下(60〜89)でアスピリンが有効である理由と合わせ、今後の検討が求められる」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)