順天堂大学循環器内科の比企 誠氏

 食後高血糖は恒常的な高血糖以上の血管傷害因子であることが指摘されており、その是正に働くα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は血管に好ましい影響を及ぼすことが期待される。順天堂大学循環器内科の比企 誠氏らは、冠動脈疾患(CAD)を有する2型糖尿病患者にα-GI・ミグリトールを単回投与し、その影響を調べた結果、食後の代謝異常の改善に加え、内皮機能の改善効果が認められたことを日本循環器学会学術集会にて報告した。

 本検討の対象は、CADを有する2型糖尿病患者11例。平均年齢65.3歳、11例中10例が男性で、HbA1cが6.3±0.5%、LDL-コレステロールが91±17mg/dLと、比較的良好にコントロールされた集団。これらの患者に対し、ミグリトール(50mg)、ボグリボース(0.3mg)、プラセボの3剤を1週間のwash-out期間を挟んで3回にわたり、無作為な順序で食直前に単回投与する無作為化クロスオーバー二重盲検試験を行った。

 評価項目は、食事(総エネルギー460kcalのテストミール)負荷後0、30、60、120分における血糖値、血清インスリン値、血清脂質値、インクレチン値と、負荷後0、60、120分における血管内皮機能。なお、血管内皮機能は、プレチスモグラフィで測定した反応性充血(RH)の持続時間によって評価した。

 その結果、ミグリトールを単回投与した場合、ボグリボースおよびプラセボに比べ、負荷60分後の血糖上昇を有意に抑制した(対ボグリボースp<0.01、対プラセボp<0.001)。また、インスリン分泌、中性脂肪(TG)の上昇も有意に抑制しており(p<0.001)、レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)値についてはプラセボに対してのみ有意に上昇を抑制した(p<0.01)。

 また、インクレチンのうち、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の食事負荷後30分および60分の上昇が有意に抑制された(対ボグリボースp<0.05、対プラセボp<0.05;30分後、p<0.01;60分後)。一方、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)については120分後にボグリボースおよびプラセボに対して有意な上昇が認められた(双方ともp<0.05)。

 さらに、ボグリボース投与時とプラセボ投与時は、食事負荷後にRH持続時間が有意に短縮し、食事に伴い内皮機能が一過性に低下することが示唆されたが、ミグリトール投与時には負荷後にもRH持続時間の短縮は認められなかった。

 以上の結果より、ミグリトールの単回投与は、CADを有する2型糖尿病患者の食後の代謝異常とインクレチン分泌を有意に改善し、血管内皮機能の保持に働くことが示唆された。内皮機能改善機序については、「食後の急激な血糖および脂質値の上昇が抑制されたことに伴う酸化ストレスの低下が関与しているのではないか」と比企氏は推察した。

 また、同じα-GIであるボグリボース投与時には上記のような応答が明確に認められなかったことについては、他のα-GIと異なりミグリトールは「吸収型」のα-GIであるために小腸上部のα-グルコシダーゼを強く抑制すると考えられるとし、「血糖上昇を抑えるだけでなく、血糖のピークを遅延させるというミグリトールのユニークな特性が作用した可能性がある」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)