日大心臓血管外科学の瀬在明氏

 緊急冠動脈バイパス術(CABG)施行患者の術後にRAA系阻害薬やhANPを投与することで長期予後を改善できる可能性が示された。3月5日から京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会で、日大心臓血管外科学の瀬在明氏が発表した。

 瀬在氏は今回、1998年から2008年まで、急性冠症候群のためCABGを施行された241例を対象に、各種データと長期予後の関係を解析した。すべての症例はオンポンプによる手術だった。同グループは、急性冠症候群や左室駆出率低下、慢性腎不全や弁膜症など、手術に対する術中、術後のhANPの有効性を評価する前向き臨床研究を行っており、今回の解析はその一部だ。

 平均年齢は67歳、80歳以上は9.1%。男性180例で、急性心筋梗塞が32.8%、不安定狭心症が67.2%だった。糖尿病合併は48.1%、高血圧は75.1%、脂質異常症は58.5%、肥満者は19.9%、喫煙者は40.7%、脳梗塞既往は6.2%、慢性腎不全16.6%、透析患者は7.1%だった。クレアチニンキナーゼMB>100U/Lは7.9%、左室駆出率は56.1±13.9(19〜83)、左室駆出率<40%は15.8%だった。

 術前の生化学検査については、BNPは229.4±399.0(13.3〜3750)、BNP>200pg/mLの患者の割合は23.3%、アルドステロンは74.0±40.1(6〜300)で、アルドステロン>100pg/mLの患者の割合は14.9%だった。

 術後の薬物治療は、アスピリンが全例に使用され、ARBは44.2%、ACE阻害薬は11.1%、β遮断薬は15.9%、アルドステロン拮抗薬47.3%、Ca拮抗薬65.5%、スタチン45.1%。術後3カ月でのBNP値は154.7±202.2pg/mL(10〜2000)、BNP>200pg/mLの患者の割合は19.0%、術後3カ月でのアルドステロン値は72.3±40.7pg/mL(12〜300)、アルドステロン>100pg/mLの患者の割合は13.3%だった。

 全死亡についての1年生存率は89.1%、5年生存率は84.9%、10年生存率は81.6%。心血管死についての1年生存率は92.9%、5年生存率は90.5%、10年生存率は87.0%だった。術後の心血管イベント無発生率については、1年で96.2%、5年で84.5%、10年で80.6%だった。

 心血管イベント発症に関する長期予後の予測因子を見出すために単変量解析を行った結果、性(女性)オッズ比0.31(以下オッズ比)、慢性腎不全3.1、人工透析6.8、hANP使用0.29、ARB使用0.16、アルドステロン拮抗薬使用0.04、スタチン使用0.37、BNP>200pg/dLが45.4、アルドステロン>100pg/dLが75.4だった。多変量解析を行った結果、性(女性)が0.11、アルドステロン拮抗薬使用が0.03、BNP>200pg/dLが11.6、アルドステロン>100pg/dLが50.8だった。

 瀬在氏らのグループは、CABG施行患者に対して術中から低用量でhANPを持続投与することで、術後合併症の発生を抑制し、長期の腎障害や心血管イベントの発生も抑制できることをこれまでに明らかにしている。

 これらの結果から、瀬在氏は、術中からのhANP投与、術後のアルドステロン拮抗薬やARBによるRAA系阻害を介する左室リモデリングの抑制は心機能を改善し、長期予後に良い効果をもたらすことを指摘。「手術の手技だけでなく、術中、術後の薬物治療も重要である」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)