重症心不全患者にしばしば合併するのが貧血で、治療の1つに赤血球造血刺激因子(EPO)投与があるが、EPO治療はHb値が10g/dL以上で始め、2g/dL以上の上昇がみられれば、貧血や心不全の改善が期待できる可能性が示された。3月5日から京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会で、国立病院機構まつもと医療センター松本病院循環器科の矢崎善一氏が発表した。

 対象は、同院に入院した有症状心不全患者のうち、頻回の入院が必要あるいは強心薬依存性で、貧血を合併している重症心不全患者20例。平均80.8歳で、男性13例、女性7例。慢性腎不全だが人工透析をしている患者は除外した。

 EPOの投与スケジュールは、入院中はエポエチン-βを週1回6000単位、退院後はエポエチン-β1万2000単位を2〜4週に1回とした。治療目標Hb値は12.0g/dL。

 対象の20例を登録時のHb値によって3群に分類した。重症貧血群(7例)は登録時Hb値9.5g/dL未満(平均8.7±0.8g/dL)、中等度貧血群(8例)は9.5≦Hb値<10.5g/dL(平均9.8±0.6g/dL)、軽症貧血群(5例)はHb値10.5g/dL以上(平均10.8±0.5g/dL)とした。

 登録時の3群の患者背景は、平均80歳、Fe値は44.3〜58.3mg/dL、Cr値は約2.5mg/dL、BNPは960〜990pg/mLで3群に有意な差はみられなかった。CRPは軽症貧血群0.41±0.51mg/dL、中等度貧血群0.34±0.27mg/dLに対し、重症貧血群は1.83±1.10mg/dLと高い傾向にあった。

 治療目標であるHb値12g/dL以上を達成できたのは、重症貧血群で7例中1例(14%)、中等度貧血群で8例中6例(75%)、軽症貧血群で5例中5例(100%)だった。

 追跡期間の中等度貧血群のHb値増加量は2.77±0.69g/dLで、軽症貧血群(1.32±0.17g/dL)、重症貧血群(1.17±0.98g/dL)に比べて有意に高かった。また、BNP値は軽症貧血群、重症貧血群が治療前と後で有意な差がみられなかったのに対し、中等度貧血群では有意に低下し、治療後は半分以下となった。また、心臓の拡張能の指標であるE/AやDctも軽症貧血群、重症貧血群では治療前後で有意な改善は認められなかったが、中等度貧血群では有意な改善が確認された。

 なお、軽症貧血群のHb値増加量が中等度貧血群に比べて少なかったことや拡張能の改善が認めなかったのは、Hb値12g/dLを達成したらEPO治療を中断することが多かったため。治療によりHb値が12g/dL以上になると血栓塞栓症のリスクが高まることが知られているからだ。軽症貧血群へのEPO治療が中等度貧血群より効果が得られにくいわけではないと考察している。

 これらの結果から、矢野氏は、重症心不全患者に対するEPO治療は、治療開始時のHb値が10g/dL程度であれば有効で、治療目標である12g/dLを達成できること、Hb値2.0g/dL以上の上昇がみられることが貧血や心不全の改善に必要ではないかと考えられると指摘した。

(日経メディカル別冊編集)