新型インフルエンザによる心筋炎の症状はさまざま――。3月5日から京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会のモーニングレクチャー「新型インフルエンザと心筋炎」では、新型インフルエンザA/H1N1によって心筋炎を発症した症例報告などが行われた。

 講演ではまず、京都大学循環器内科学准教授の松森昭氏が、ウイルス性心筋炎について概説。心筋炎を起こすウイルスとしては、コクサッキーウイルスC型肝炎ウイルスなどが知られているものの、インフルエンザウイルスも心筋炎を引き起こすことを指摘するとともに、過去の論文などでは心筋炎の数%がインフルエンザによるものと考えられていると説明した。

 また、新型インフルエンザA/H1N1によって心筋炎を発症した患者の心筋を免疫染色した病理写真を提示。「詳細な検討が必要だ」としながらも、心筋にインフルエンザウイルスが浸潤している様子が示された。

 講演では心筋炎を発症した症例についても報告された。沖縄県立南部医療センター・こども医療センター循環器科の中村牧子氏は、劇症型心筋炎を発症した11歳の症例を提示。同センターは同症例に対し、人工心肺装置(PCPS)、大動脈内バルーンパンピング補助、持続的血液濾過透析(CHDF)、γグロブリン大量療法、ステロイドパルス、オセルタミビル(商品名タミフル)投与を施行して、救命することに成功した。中村氏は「臓器障害が進行する前にPCPSを導入したことが救命につながった」と振り返った。

 同じく劇症型心筋炎を発症した31歳の症例を経験した広島大病院高度救急救命センターの西岡健司氏も、急激な循環破綻を来たしたことから補助循環の導入を行ったことなどを報告。同症例の慢性期の心筋生検所見を示し、「炎症細胞が浸潤し、空胞を形成している」と説明した。

 とはいえ、国内において心筋炎を発症した症例が、どれも似ているわけではない。大阪医科大総合診療科の浮村聡氏は、これまでに新型インフルエンザによって心筋炎を起こした全16症例の概要を紹介。心症状はたこつぼ様、3度房室ブロックなどさまざまであることが明らかになった。また、浮村氏は「心症状が発現する時期は、第1病日の症例もあれば第51病日の症例もある」と、症状、発現時期が一様ではないことを強調した。

 また、浮村氏は日本循環器病学会として、新型インフルエンザによる心筋炎の病像と臨床像を明らかにし、早期診断、早期治療の有効性を検証する目的で、症例調査研究を始めることを発表した。症例調査研究の対象は、新型インフルエンザと診断され、入院した患者。

 調査では、病歴や診察所見、心電図(小児では必須ではない)、心筋逸脱酵素、胸部レントゲンなどから心筋炎が疑われる症例については、心臓超音波検査を実施。学会へ報告するとともに、急性及び慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドラインに準じて、治療を行う。

 また、心臓超音波検査で異常が認められなかった症例についても、経過観察を行い、必要に応じてバイオマーカー、心臓超音波検査を再施行する。これまで急性心筋炎に対する、大規模な疫学調査は行われていないことから、早期診断の有用性などが明らかになれば、今後のインフルエンザの診断、治療にも影響する可能性がありそうだ。

(日経メディカル別冊編集)