熊本大循環器病態学の外山研介氏

 慢性腎臓病(CKD)を合併した心血管疾患(CVD)患者に、運動療法を行って脂質値(特に中性脂肪)が改善すると、腎機能障害の進展が抑制されることが示された。熊本大循環器病態学の外山研介氏が、3月5日から京都で開催されている第74回日本循環器学会総会・学術集会で発表した。

 心血管疾患と慢性腎臓病の合併は、心血管死の高リスク因子だ。また、近年、循環器領域では、心疾患患者における心臓リハビリテーション(運動療法)の効果が注目を集めており、運動療法群は非運動療法群に比べて有意に心血管イベントや心血管死が少ないことが判明している。

 1990年代ごろから動物実験などで、運動は腎障害進展に対して保護作用を有することが示され始め、さらに2008年には、有酸素運動は慢性腎臓病者の尿中微量アルブミンを抑制し、腎機能(eGFR)を改善することが報告された。そこで、外山氏は、CKDを合併した心血管疾患患者において、運動療法が腎臓に与える影響を評価した。

 対象はCKDを合併する14人のCVDの患者。CVDの内訳は、狭心症4例、冠攣縮性狭心症2例、陳旧性心筋梗塞4例、急性心筋梗塞2例、腹部大動脈瘤1例、大動脈乖離1例。平均年齢70.1±12.2歳、男性13例、女性1例、平均BMIは25.3±3.8Kg/m2、虚血性心疾患12例(85.7%)、左室駆出率(LVEF)57.8±10.3%だった。

 これら対象者を、非運動群(5人、平均eGFR47.1±12.4ml/min/1.73m2)と、運動群(9人、平均eGFR48.5±13.6ml/min/1.73m2)に分け、心肺運動負荷試験であるCPETおよび採血を評価した。観察期冠の平均は87.1±2.9日。

 患者背景については、非運動群は平均年齢68.4±18.7歳、全員が男性、BMI26.0±3.3Kg/m2、収縮期血圧132.0±26.1mmHg、拡張期血圧79.6±10.4mmHg、左室駆出率58.0±6.5%、全員が高血圧、糖尿病20%、脂質異常100%、喫煙率20%。

 一方、運動群は、平均年齢71.1±8.1歳、男性8例女性1例、BMI24.9±4.3Kg/m2、収縮期血圧120.8±19.3mmHg、拡張期血圧68.9±9.3mmHg、左室駆出率57.8±12.4%、高血圧89%、糖尿病56%、脂質異常78%、喫煙率11%と、年齢、性別、BMI、血圧、登録時の心機能、運動耐容能、リスクファクター、服薬などのいずれにおいても両群間で有意差は認められなかった。

 観察の結果、非運動群では観察期間中に運動耐容能がさらに低下したのに対し、運動群では運動耐容能は有意に改善していた。そして、運動群では、運動耐容能の改善に従って腎機能の改善を認めた。腎機能の変化量と運動耐容能の変化量は強い相関を示していた。

 各脂質成分の変化をみると、運動群のトリグリセリドは非運動群に比べて有意に改善しており、LDLコレステロールは非運動群と比べてより減少する傾向にあった。HDLコレステロールは非運動群よりも増加量が多い傾向にあった。HDLコレステロールはeGFRの変化量と正の相関する傾向にあり、トリグリセリドは有意な負の相関があることが認められた。

 一般的に、運動療法は、肥満の改善や血圧低下、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝異常の改善、酸化ストレスの減少、内皮機能の改善などの効果により、抗動脈硬化作用を示すと言われている。中でも脂質代謝異常の改善については、運動によるHDLの増加、TGの減少効果などが影響すると考えられている。2006年にCKD患者は高中性脂肪や低HDLコレステロールを呈している例が多く、これが腎機能悪化の悪循環を起こす可能性があると報告された。さらに、2009年には、CKD患者において中性脂肪は独立したリスク因子と報告された。

 今回の結果とこれまでに報告された知見から、外山氏は、「CKD患者において、中性脂肪高値とHDLコレステロール低値が改善することは、腎機能悪化の悪循環を打ち切ることになるのではないか」と述べた。