自治医科大学循環器内科の苅尾七臣氏

 昨年、コントロール不良な高血圧症例に対するカルシウム拮抗薬(CCB)アムロジピンの倍量投与が承認された。自治医科大学循環器内科の苅尾七臣氏らは、新たな用量での治療の日常臨床での効果を確認するため、インターネットを利用した調査を実施。その結果、アムロジピン5mgでコントロール不良な高血圧患者の約半数が、同剤の増量によってコントロール可能になる可能性が示唆されたことを、3月5日から京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会にて報告した。

 対象は、2009年2月以降にアムロジピンを5mgから10mgに増量し、外来および家庭血圧を測定した高血圧患者。苅尾氏らは、インターネット医療情報サービス「ケアネット」を通じて同サービスの会員医師に協力を呼びかけ、753例の症例を登録。処方開始時と次回来院時(1カ月後)、調査終了時(3カ月後)の各時点における症例情報を追跡した。主要評価項目は、外来および家庭血圧値、副次評価項目として、外来血圧における降圧目標達成率があげられた。

 全753例のうち3ヵ月の調査終了期間中に、追跡中断例(n=114)や追跡不能例(n=35)、追跡中に用量の変更(n=10)や併用薬の変更(n=14)があった例、投与が中止された例(n=6)を除く583例が解析の対象となった。患者の平均年齢は66.1歳であり、5人に1人(21.1%)が糖尿病を合併し、3人に1人(32.1%)が肥満であった。また、9.3%の患者に脳血管障害、3.3%の患者に心筋梗塞の既往があり、35.7%にCKDの合併がみられた。

 アムロジピン増量前の血圧値は、外来血圧が156.4/86.3mmHg、家庭血圧が151.5/83.9mmHgであった。処方された降圧薬数は、1剤(アムロジピンのみ)が43.6%、2剤が36.9%であり、3剤以上の併用例は19.6%であった。主な併用薬は、ARB(38.3%)、利尿薬(10.6%)、ARBと利尿薬の合剤(7.7%)などであった。

 アムロジピン増量後の血圧は、3カ月間で外来血圧が18.9/9.8mmHg、家庭血圧が16.0/8.7mmHg低下し(ともにp<0.001)、外来血圧は137.5/76.5mmHg、家庭血圧は135.5/75.2mmHgとなった。これに伴い、外来収縮期血圧≧140mmHgかつ家庭収縮期血圧≧135mmHgの「コントロール不良例」の割合は、増量前の88.5%から半分以下の32.6%へと激減した(p<0.01)。

 増量に伴う降圧効果は、増量前の処方内容にかかわらず一貫して認められた。また、増量前の収縮期血圧と増量による降圧度の間には有意な相関が認められ(外来血圧:r2=0.3172;p<0.001、家庭血圧:r2=0.3597;p<0.001)、増量前に血圧が高かった患者には増量により大きな降圧が期待できるとともに、増量前の血圧がさほど高くなかった患者では降圧度は少なく、過度な降圧が生じる恐れは少ないことが示された。

 また、増量に伴い、CCBに特徴的な副作用である反射性の交感神経活性亢進が増強される可能性が懸念されたが、いずれにおいても心拍数への影響は認められなかった。

 以上のように、アムロジピンの倍量投与は、安全に降圧効果を増強できる手段であり、日常診療で頻繁に遭遇するコントロール不良の高血圧症例に対する有用な選択肢となるものと考えられた。また、10mgに増量した場合でも、併用する降圧薬の種類に関係なく、高い血圧は下げ、低い血圧は下げすぎずに安定した降圧効果を発揮するというアムロジピンの特性も確認された。

 一方で、外来血圧、家庭血圧ともにガイドラインが掲げる降圧目標値を達成できた患者の割合は、増量前の0.3%に比べて増量後は大きく増加したとはいえ24.4%にとどまった。とくに、糖尿病、CKD、心筋梗塞のいずれかを有する患者(n=270)における目標達成率は増量後でも8.9%にすぎず、ハイリスク患者に対してはアムロジピンの増量とともに更なる介入が求められることも明らかになった。

(日経メディカル別冊編集)