広島大学循環器内科の端孝樹氏

 Rho/Rhoキナーゼ系は、細胞のCa2+感受性を亢進させることによって血管収縮を促進し、高血圧の継続や進展に関連することが推測されている重要な系だ。広島大学循環器内科の端孝樹氏らは、カルシウム拮抗薬(CCB)にはRhoキナーゼ活性を抑制する作用があり、それがCCBの血管拡張、降圧機序の一端を担っている可能性があることを、3月5日より京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会にて報告した。

 RhoキナーゼはRho/Rhoキナーゼ系の中核を担う酵素であり、細胞増殖や遊走、接着、アポトーシス、収縮など細胞の多彩な機能を媒介することがわかっている。Rhoキナーゼ活性が、血管平滑筋の収縮に関与している。端氏らは、降圧薬治療中の本態性高血圧患者コホートにおける横断調査と、未治療の本態性高血圧患者を対象としたCCBアムロジピン対ARBロサルタンの前向き比較試験という2つのアプローチにより、Rhoキナーゼ活性に及ぼすCCBの影響を検討した。

 横断調査の対象は、降圧薬にて治療中の本態性高血圧患者571例。端氏らは、これらの患者の末梢血白血球を採取し、ミオシン脱リン酸化酵素のミオシン結合サブユニット(MBS;Rhoキナーゼによるリン酸化の標的)の総量と、リン酸化を受けたMBS量を定量し、両者の比(pMBS/MBS比)を求めることによってRhoキナーゼ活性を評価した。

 その結果、CCB投与を受けていない患者(n=457)のpMBS/MBS比は0.82±0.60であったのに対し、CCB投与を受けている患者(n=185)のpMBS/MBS比は0.71±0.48と有意に低く(p<0.05)、Rhoキナーゼ活性の低下が示唆された。一方、レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害薬や利尿薬、β遮断薬の投与とRhoキナーゼ活性の間には有意な相関は認められなかった。

 続いて端氏らは、未治療の本態性高血圧患者24例を無作為に2群に分け、一方にはアムロジピン5mg(アムロジピン群;n=12)を、もう一方にはロサルタン100mg(ロサルタン群;n=12)を12週間にわたって投与し、治療に伴う両群のRhoキナーゼ活性の変化を比較した。

 その結果、アムロジピン群のpMBS/MBS比は、ベースライン時の 0.81±0.53から4週後には0.66±0.31へ、12週後には0.69±0.31へと有意に低下した(4週間後・12週間後ともにp<0.05 vs ベースライン時)。これに対し、ロサルタン群のpMBS/MBS比には有意な変化は認められなかった。

 なお、血圧は両群ともに有意に低下し、4週、12週とも両群の降圧効果に有意差は認められなかった。

 以上の結果から、本態性高血圧患者のRhoキナーゼ活性は、CCBアムロジピンの投与によって抑制される可能性が示唆された。この発表について、セッションの座長からは、「近年CCBの好ましい臨床効果に関する報告が相次ぐなか、そのメカニズムの解明に迫る貴重な報告だ」とのコメントが寄せられた。

(日経メディカル別冊編集)