順天堂大学循環器内科の代田浩之氏

 アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)単剤で血圧コントロール不良な糖尿病合併高血圧患者に対する至適降圧療法を探るADVANCED-J試験の結果が発表された。ARBの増量によって降圧不足に対処する治療と、カルシウム拮抗薬(CCB)の併用で相乗的な降圧効果増強を狙う治療の比較は、朝の血圧、夜の血圧、外来血圧のいずれの降圧においてもCCBの併用の有用性が示されるという結果となった。さらに、血管機能や腎機能の指標においてもARB増量に比べて有用性が認められ、CCB併用療法により中・長期的な臓器保護作用が期待できると考えられた。この結果は、3月5日から京都で開催されている第74回日本循環器学会総会・学術集会で、順天堂大学循環器内科の代田浩之氏らが報告した。

 糖尿病合併高血圧患者の降圧治療に際しては、(1)糖代謝腎機能を悪化させない降圧薬を用い、(2)通常よりさらに厳格な降圧をめざすこと、の2点が必須条件。国内外の高血圧治療ガイドラインでは、(1)の観点からACE阻害薬ARBを第一選択薬と位置づけており、実臨床でもこれに従ってARBが汎用されている。しかし、現実にはARB単剤で降圧目標値を達成することは難しく、(2)の観点からARBの増量もしくは他剤の併用が必要となることが多いが、そのどちらの戦略が有用であるかというエビデンスは示されていない。

 ADVANCED-J試験は、この疑問に対する答えを得るべく計画された無作為化比較試験。対象は、外来血圧≧135/85mmHgの2型糖尿病合併高血圧患者で、通常用量のARBによる8週間以上の治療にもかかわらず、登録前5日間の朝の家庭血圧平均値が≧130/80mmHgの263例。ただし、SBP≧180mmHgもしくはDBP≧110mmHgの患者や二次性高血圧患者、重度の肝機能異常、腎機能障害を持つ患者は除外された。

 対象者を無作為化のうえ二群に分け、一方はARBを最大用量まで増量し(ARB群;n=132)、もう一方はCCBアムロジピン5mg/日を併用する(CCB群;n=131)治療を行い、3年間の追跡を行った。

 主要評価項目はベースライン時から1年後の朝の家庭血圧の推移。また、副次評価項目として、夜の家庭血圧および外来血圧の推移、降圧目標達成率のほか、頸動脈内膜中膜厚(IMT)や脈波伝播速度(PWV)などの血管機能指標の変化、血清クレアチニンやeGFRなどの腎機能指標の変化などが検討された。

 試験の結果、ベースライン時に両群で同等であった朝の家庭血圧(CCB群:158.2/82.5mmHg vs ARB群:157.3/84.4mmHg)は、1年後にはCCB群で139.6/74.6mmHg、ARB群で149.1/78.1mmHgとなり、両群間には有意な差が認められた(p=0.001[収縮期]/p=0.010[拡張期])。同様に、夜の家庭血圧と外来血圧についても、1年後の降圧効果はCCB群の成績がARB群を有意に上回っていた。

 なお、3年の追跡期間で、ARB群患者の68.2%(90/132例)、CCB群の41.2%(54/131例)に他の降圧薬が追加され、ARB群の21.2%(28/132例)にはCCBが処方されるなど、両群の治療内容は次第にオーバーラップしていった。これに伴い、3年目の評価では、各降圧指標における両群の差は1年目の評価時より縮小したが、主要評価項目である朝の家庭血圧の差は依然として有意であった(CCB群132.8/72.3mmHg vs ARB群139.6/76.3mmHg;p=0.008[収縮期]/p=0.033[拡張期])。

 さらに、ARB群の平均IMTは3年間を通してほとんど不変であったのに対し、CCB群の平均IMTは徐々に減少に向かい、3年目の評価では両群間に有意な差が認められた(p=0.018)。また、ARB群ではCCB群より大きくかつ有意なeGFR低下が認められた(-7.55mL/分/1.73m2 vs -1.59mL/分/1.73m2;p=0.009)。

 以上の結果より、ARB単剤で血圧コントロール不良な糖尿病合併高血圧患者への治療戦略としては、ARBを増量するよりCCBを追加するほうが降圧効果に優れ、さらには血管機能の改善作用も期待できることが示唆された。

 しかし、ARBとCCBを併用した場合でも、降圧目標達成率は、朝の家庭血圧が20.5%、夜の家庭血圧が43.9%、外来血圧が37.5%と、必ずしも十分な数字ではなかった。代田氏は、「2型糖尿病合併患者に対するより確実な降圧のためには、3剤もしくはそれ以上の降圧薬を併用するなど、よりアグレッシブな治療が必要なのかもしれない」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)