国立病院機構岡山医療センター循環器科の木村英夫氏(写真右)、同センター循環器科の宮地克維氏(写真左)

  肺静脈閉塞症(PVOD)や肺毛細血管腫症 (PCH)に抗癌剤イマチニブを投与すると、短期的に臨床症状や血行動態を改善できる可能性が示された。国立病院機構岡山医療センター循環器科の木村英夫氏(写真右)と宮地克維氏(同左)らの研究で、3月5日から7日まで京都で開催された第74回日本循環器学会総会・学術集会で木村氏が発表した。

 PVODやPCHは、肺細静脈・毛細血管の増殖性閉塞によって肺高血圧を来す難治性疾患だ。拡散能低下や低酸素血症を来し、血管拡張薬であるエポプロステノールが無効であることが知られている。現在、生命予後を改善できる治療は肺移植のみと、予後が悪い。

 イマチニブは、チロシンキナーゼ阻害作用を持つ分子標的型抗癌剤で、血小板由来成長因子(PDGF)受容体への阻害作用も持つことが知られている。最近、肺動脈性肺高血圧症やPVODに対する有効性が報告されており、木村氏ら岡山医療センターのグループも同院を受診したPVOD、PCH患者6例を対象に、イマチニブの有効性を評価する臨床研究を行った。

 対象はPVODあるいはPCHと診断された患者6例(男性5、女性1)で、エポプロステノールで肺うっ血および酸素化が増悪した症例だ。イマチニブ100mg/日から投与開始し、開始2週間以降に症状や忍容性に応じて増量した。増量後は150〜250mg/日だった。

 評価項目は収縮期肺動脈圧、BNP、心内圧などで、投与1カ月後、1年後に評価した。生存率は、イマチニブを投与していなかった過去のPVOD/PCH患者6例を対照とし、後ろ向きに解析した。

 収縮期肺動脈圧は投与前96±18mmHg。投与1カ月後は73±13mmHg、投与1年後は80±15mmHgで、いずれも投与前より低下していたが、有意な変化ではなかった。

 BNP濃度は、投与前317±83pg/mLから投与1カ月後は75±39pg/mLに低下し、投与1年後は168±45pg/mLに微増。しかし、いずれの変化も有意ではなかった。NYHA心機能分類も、投与前3.4±0.5から投与1カ月後2.0±0.8、投与1年後2.4±0.9で、投与前に比べて低下していたが、有意ではなかった。生存率にも有意な差はみられなかった。

 木村氏は、「症例数が少ないことから有意差は認められなかったが、短期的にはイマチニブ投与によりPVOD、PCHの症状を改善する傾向がみられた。イマチニブは肺の血管リモデリングに関与する血管増殖因子を阻害するという作用機序から考えて、長期的な予後改善の効果を期待できる可能性がある。今回の研究では、1年後の症状が1カ月後と同程度だったが、イマチニブの用量は100mg/日から300mg/日で、抗癌剤として使われる用量の半分から6分の1程度。投与開始時の用量が最適ではなかった可能性が考えられる」と考察した。同グループは今後、用量の最適化など、研究をさらに進めていく考えだ。

(日経メディカル別冊編集)