心臓血管研究所付属病院の仙波宏章氏

 初診の心不全患者に占める拡張性心不全heart failure with preserved EF)の頻度は従来の報告より高く、収縮性心不全と比べて予後は良好であることを、3月5日から京都で開催されている第74回日本循環器学会総会・学術集会で心臓血管研究所付属病院の仙波宏章氏が報告した。

 拡張性心不全は、明らかな心不全症状を呈していながら左室駆出率(LVEF)は保たれている病態。高齢患者の増加などで近年注目が高まっているが、頻度や臨床像はまだ十分に検討されていない。今回の報告は、心臓血管研究所が2004年度から初診患者を全例登録して予後などを追跡している心研データベースを用いて、初診で心不全と診断された患者に占める拡張性心不全の頻度を調べ、病態や予後を収縮性心不全と比較した。

 2004年度から2008年度まで、インフォームド・コンセントを経て登録された初診患者1万1124人のうち、初診で心不全(NYHA分類 II度−IV度)と診断されたのは1543人。外来患者の割合が高いことから、軽度の心不全が多く、NYHA II度が75.2%を占めた。LVEFの平均は56.0±18.4%だった。

 拡張性心不全はEF≧50%の心不全、収縮性心不全はEF<50%の心不全とした。この定義に沿って、心エコー検査で評価できた心不全患者1492人を拡張性と収縮性に分けると、拡張性は1012人(67.8%)、収縮性は480人(32.2%)だった。両群の患者背景を比較すると、拡張性には、高齢(65.3歳 vs. 62.1歳)、女性が多い(35% vs. 19%)、NYHA II度が多い(83% vs. 60%)といった特徴が確認された。

 平均497日のフォローアップで、両群の総死亡数は96人で、心臓死は45人。1年死亡率は拡張性が有意に低かった(3.0% vs. 10.0%)。心不全入院も拡張性が有意に低く(9.4% vs. 32.5%)、拡張性の方が収縮性よりも予後は総じて良好だった。

 これまでの日本および欧米における拡張性心不全の主要な報告では、心不全に占める拡張性心不全は日本では3〜4割、欧米では3〜5割程度。今回の報告はこれらと比べて、拡張性の割合がかなり高くなっている。従来の報告との差異について仙波氏は、「単一施設における集計ということと、都心部で紹介患者が多いという要因が影響していると考えられる」としつつも、「軽症心不全を対象に広げると、拡張性心不全はかなりの頻度で存在していることを示唆している」とし、今後の検討の必要性を指摘した。

(日経メディカル別冊編集部)