横須賀共済病院循環器内科の野里寿史氏

 横須賀共済病院循環器内科医長の野里寿史氏は、同院で大腿〜膝窩領域に血管内治療を施行した132人の治療成績とニチノールステントの有効性について、3月5日から京都で開催されている第74回日本循環器学会学術集会で発表した。

 現在、下肢閉塞性動脈硬化症PAD)患者に対して、運動療法、薬物療法、血管内治療、バイパス手術などが行われている。しかし、大腿〜膝窩領域の血管内治療の成績に関するデータは少なく、特にステント治療の成績は報告例が少ない。

 そこで、野里氏は、横須賀共済病院循環器内科で2003年12月〜2009年8月に大腿〜膝窩領域に血管内治療を施行した132例を対象に、血管内治療の成績について検討した。

 132例中1例は抗リン脂質抗体症候群により除外した。残りの131例中66例は慢性完全閉塞(chronic total occlusion ;CTO)病変だった。CTOのうちステント留置術(ニチノールステント以外のステント使用例は除外)を行ったのが45例、バルーンによる拡張術(plain old balloon angioplasty;POBA)を行ったのが13例。一方、CTOでない患者では、11例がステント留置術を受け、54例がPOBAを受けた。CTO例でステント留置術が選択された患者が多かった。

 ニチノールステント群(45例)とPOBA群(67例)の間の患者背景について、年齢や性、高血圧や脂質異常症などに有意な差はなかったが、糖尿病例がニチノールステント群で21例(47%)であったのに対してPOBA群は44例(66%)と有意に多かった(p=0.04)。また血糖値がニチノールステント群107.2±29.2mg/dLに対してPOBA群131.0±48.8mg/dL(p=0.004)と高く、治療前のABIはニチノールステント群0.55±0.21に対してPOBA群0.67±0.16(p=0.0007)だった。

 ニチノールステント群はPOBA群と比較して、病変が長く、CTOやTASC分類のCおよびDの複雑病変を有する症例が多かったが、ニチノールステント群とPOBA群について3年間の予後を検討したところ、慢性期成績(総死亡、TLR[標的病変部血行再建術])は2群間で同等だった。

 両群の術後の転帰については、死亡率や心血管死亡、患部の血管再生、下肢切断などについて有意差はなかった。比例ハザードモデルでは、TLRに影響する因子として、非透析例(リスク比0.1372、p=0.0454)、病変長(リスク比0.8207、p=0.004)、LDL-C値(リスク比1.0493、p=0.0039)、スタチン非使用(リスク比3.0064、p=0.0251)が見いだされた。

 野里氏は、「大腿〜膝窩領域に対する血管内治療においてニチノールステントは有効。慢性期狭窄に関与する因子としては、病変背景以外に脂質管理が重要であることが示唆された」と述べた。

(日経メディカル別冊)