愛知医科大学循環器内科の前田一之氏

 ARB冠動脈などの動脈硬化性病変の進展を抑制するといわれ、その作用は虚血性心疾患患者の長期予後を改善すると期待される。ARBによる動脈硬化の退縮が冠動脈イベントの再発予防につながるかどうかを検討した研究で、ARBが冠動脈プラーク容積を有意に減少させること、新規冠動脈病変に対するインターベンションPCI)施行のリスクを有意に低下させることが示された。3月20日〜22日に大阪で開催された第73回日本循環器学会・学術集会のポスターセッションで、愛知医科大学循環器内科の前田一之氏が報告したもの。

 昨年の本学会で前田氏らは、ARBバルサルタンを投与された冠動脈疾患患者では、血管内超音波法で測定される冠動脈プラーク容積が、対照群(ACE阻害薬、ARB非投与)に比べて有意に減少したと報告したが、今回発表したのは、同じ被験者を含む集団を追跡し、バルサルタンの臨床的イベントに及ぼす影響を観察した成績である。

 対象は2000〜2006年の期間にPCIを施行された冠動脈疾患患者234例である。被験者をバルサルタン内服群(111例)とARB、ACE阻害薬を内服しない対照群(123例)に分けて検討した。観察期間は平均3年間である。臨床的エンドポイントとして死亡、心筋梗塞冠動脈バイパス術標的病変の血行再建術TLR)、新規病変に対するPCI、脳梗塞の発生頻度を両群間で比較した。

 両群の背景因子をみると、バルサルタン群は対照群に比べて急性冠症候群(ACS)患者の比率が有意に高かったが(57% vs 20%)、これはACSの治療にARBが必要とされることが多いためである。他の背景因子および併用薬剤については、両群間に有意差は認められず、プロフィールの類似した2集団であることが明らかになった。

 治療前後の血圧、血清脂質、クレアチニン、HbA1cは両群ほぼ同レベルであり、心血管病危険因子の管理は良好に行われた。

 観察期間における臨床的イベントの頻度を比較した結果、死亡、心筋梗塞、冠動脈バイパス術、TLR、脳梗塞に明らかな差はみられなかったが、新規冠動脈病変に対するPCIの頻度は対照群の14.6%に対し、バルサルタン群では6.3%と半分以下に低下、両群の差は有意であった(p<0.05)。

 前田氏は、先行する研究と今回報告した結果を踏まえ、PCIを必要とする新規冠動脈病変を減少させたバルサルタンの効果には、冠動脈病変の進展を抑制する作用が寄与した可能性が高いと述べた。