埋め込み型補助人工心臓エヴァハート」の治験結果は、1年生存率が83%と心臓移植に近い良好な成績であることが明らかになった。8割近くがNYHA1に改善、QOLも良好という。3月20日から22日まで大阪で開催された第73回日本循環器学会総会・学術集会のシンポジウムで、東京女子医科大学心臓血管外科教授の山嵜健二氏が発表した。

 国内での心臓移植の実施件数は、欧米に比べてはるかに少ない。移植までの待機時間は「最短でも2年」(山嵜氏)かかるため、心臓移植を待つ間に死亡する患者も多く、長期にわたって利用できる補助人工心臓が求められてきた。

 エヴァハートは、東京女子医科大学、早稲田大学、サンメディカル技術研究所(長野県)が共同開発した。国産製品で今回の治験が初めての人への応用だったため、慎重を期すため、パイロット試験とピボタル試験の2段階に分けて行われた。

 パイロット試験は、2005年5月から東京女子医科大学と国立循環器病センターで3症例を対象に実施され、埋め込みから3カ月時点で評価した。また、ピボタル試験は、2006年6月から、上記2施設に大阪大学、埼玉医科大学、東北大学病院を加えた計5施設で15症例を対象に実施され、6カ月時点で評価した。

 対象はいずれも、心臓移植適格者と思われる末期重症心不全の患者。18歳から65歳で、NYHA4度、強心剤の持続点滴を受けており、推定余命6カ月未満とされていた。

治験が行われた国産補助人工心臓エヴァハート

 パイロット試験の対象は、46歳男性、29歳男性、40歳女性の3人。いずれも拡張型心筋症で、29歳男性は1165日目に、40歳女性は1147日目に心臓移植を受けた。46歳男性は既往の糖尿病があり、補助人工心臓移植後に体重が増加したため、心臓移植の適格からはずれたが、1414日(2009年3月21日時点)経過した現在でも、普通に仕事、生活をしているという。

 パイロット試験とピボタル試験の合計18人を対象とした治験の結果は、平均年齢42歳、カプランマイヤー法で算出した生存率は、6カ月で89%、1年で83%、2年で70%、3年で70%だった。

 平均補助期間は641日で、18人のうち3人が心臓移植を受けた。18人のうち14人がNYHA1度に改善した。高次脳機能の低下は認められず、QOLは社会生活や精神的な健康面など、ほとんどの項目で改善した。

 心臓移植を受けた症例や死亡した症例から取り出されたエヴァハートには、血栓の跡などは見られなかったほか、機器の重大な不具合などもなかった。死亡したのは5人で、死因は脳出血3人、脳梗塞1人、急性右心不全から蘇生後脳症を経ての多臓器不全で1人(一部週刊誌に報道された症例)だった。

 治験での生存率は、国際心肺移植学会の補助人工心臓を埋め込んだ420人の生存率(1年生存率56%)に比べても良好で、国際心肺移植学会の心臓移植を受けた6万6751人の生存率と同等だった。現在、サンメディカル技術研究所は、エヴァハートの承認を申請中だ。また、欧米で治験を行うための準備を進めているという。