静岡がんセンター循環器科の飯田圭氏

 癌患者において、薬剤溶出ステントDES)留置後、予定外の検査や手術などで抗血小板併用療法を短期間中断しても、ステント血栓症のリスクが大きく高まることはなさそうだ。3月20日から22日まで大阪で開催された第73回日本循環器学会総会・学術集会のプレナリーセッション「薬剤溶出ステントの現状と展望」で、静岡がんセンター循環器科の飯田圭氏(写真)が報告した。

 DESの登場で再狭窄リスクは減ったが、ステント血栓症のリスクは懸念される。そのため、DES留置後にはアスピリンクロピドグレルなどによる抗血小板併用療法(Dual Antiplatelet Therapy:DAT)が行われる。癌患者などでは、急な検査や手術のため、DATを中断/中止することがあるが、その場合のステント血栓症リスクについて検討された研究は少ない。

 飯田氏らの研究グループは、主に癌患者を対象にDES留置後のDATの継続状況と心血管イベントの発症について、後ろ向きに解析した。対象は、2004年12月から2008年5月までに静岡がんセンターでシロリムス溶出ステントSES)を留置した132人(159ステント)。平均年齢は69.7歳で男性86人、女性46人。癌患者は86人、非癌患者は46人だった。平均観察期間は372日。

 132人のうち、観察期間中、何らかの形でDATを中断した88人をA群、DATを中断しなかった44人をB群とした。またA群を、SES留置後30日以内に1回以上DATを中断した51人と、30日以降に中断した37人に分類。30日以内にDATを中断した51人をさらに、30日以内に1回でも完全にDATを中止したC群と、DAT以外の抗血小板療法を行ったD群に分類した。C群にはSES留置後、検査や手術が必要となり、短期間DATを中断して、再開した患者が多かった。D群には、副作用などでDATを中止し、他の抗血小板療法に切り替えた患者が多かった。

 A群(88人/106病変)の患者背景は、男性69人、女性19人。平均年齢は69.6歳。平均ステント長は18.9mmで、平均ステント径は2.75mm。癌患者は67人(76.7%)。B群(44人/53病変)の患者背景は、男性36人、女性8人。平均年齢は69.8歳。平均ステント長は18.7mmで、平均ステント径は2.81mm。癌患者は20人(46.2%)。

 C群(23人)の患者背景は、男性19人、女性4人。平均年齢は71歳。SES留置からDATを中断するまでの平均日数は16.1日、DATの平均中断期間は67.1日だった。癌患者は21人(89%)。D群(28人)の患者背景は、男性23人、女性5人。平均年齢は71.9歳。SES留置からDATを中断するまでの平均日数は4.4日。DATの平均中止期間は464.6日だった。癌患者は19人(68%)。

 ちなみに、C群とD群でDATを中断または中止した理由は、検査や手術が54%、副作用が38%、出血傾向が4%、全身状態の悪化が4%だった。D群におけるDAT中止後の抗血小板療法は、アスピリン単剤が41%、アスピリンとシロスタゾールの併用が18%、シロスタゾール単剤が10%、シロスタゾールとベラプロストナトリウムの併用が10%、アスピリンとシロスタゾールとベラプロストナトリウムの併用が8%、その他が13%だった。

 観察期間中、B群では、脳梗塞、急性または亜急性ステント血栓症、遅発性ステント血栓症の心血管イベントは起きなかった。B群では3人が癌で死亡し、1人が標的病変部血行再建を行った。また、A群のうち30日以内に1回以上DATを中断または中止したC群とD群でも、同様の心血管イベントは起きなかった。D群では、1人が癌で死亡し、1人が出血性脳卒中で死亡。30日以降にDATを中断または中止した群(37人)でも、同様の心血管イベントは起きず、1人が癌で死亡した。また、1人が虚血性脳卒中を起こし、3人が標的病変部血行再建を行った。

 この結果から研究グループは、当初の予想以上に、心血管イベントが少なかったと結論。飯田氏は、「あらかじめ検査や手術の予定があれば、ベアメタルステント(BMS)の留置を考慮する」とした上で、「癌患者では、予定外の検査や手術によりDATを中断せざるを得ない症例も少なくない。しかし、今回の研究から、短期間のDATの中断であれば、心血管イベントリスクが大きく高まることはないといえそうだ」と話した。