急性心筋梗塞既往のメタボリックシンドローム患者が禁煙すると心血管イベントリスクが57%低下する可能性が示された。しかし、心筋梗塞後も喫煙を続ける患者は喫煙者の3分の1に達し、持続喫煙者の長期予後は、心筋梗塞後禁煙者と比較して冠動脈イベントの発症率が高いことも示された。

 これは、急性心筋梗塞患者9000例以上を登録、追跡している前向き観察研究であるOsaka Acute Coronary Insufficiency Study(OACIS)の解析の結果から明らかになったもので、3月20日から22日まで大阪で開催された第73回日本循環器学会総会のシンポジウムで、大阪大学循環器内科学の佐藤洋氏が発表した。

 ST上昇型急性心筋梗塞の予後は、年を追うごとに改善しており、1998〜2000年、2001年〜2003年、2004年〜2006年と3年ごとに区切って全死亡率を比較した結果、1998〜2000年のハザード比を1.0とした場合、2001〜2003年はハザード比0.89、2004〜2006年はハザード比0.68と低下している。これは、経皮的冠動脈形成術(PCI)の進歩や数多くの大規模試験などで得られたエビデンスに基づく薬物治療が広く普及したためだとした。

 しかし、喫煙と予後の関係を解析した結果からは、まだ患者のリスク管理が不十分である現状が浮き彫りとなった。

 OACISに登録された患者のうち6割が喫煙者で、そのうち3分の2は心筋梗塞発症後に禁煙するものの、3分の1の患者は喫煙を続けており、この持続喫煙群は梗塞後禁煙群と比較して長期の冠動脈イベント発症率は有意に高いことが明らかになったからだ。

 メタボリックシンドローム(MetS)と喫煙状態と心血管イベントの発症リスクを比較した結果、MetS(-)で喫煙歴のない患者の心血管イベントリスクを1とした場合、MetS(-)で持続喫煙者の心血管イベントのリスクは1.385、MetS(-)禁煙者は0.953で、禁煙することでイベントリスクは31%減少できることになるとした。

 さらに、MetS(+)で喫煙歴のない患者のイベントリスクは1.127、MetS(+)で持続喫煙者のリスクは3.041、MetS(+)で禁煙者は1.701で、メタボリックシンドローム患者では禁煙することでイベントリスクは57%減少できることになると指摘した。

 シンポジウムの座長を務めた滋賀医科大学福祉保健医学講座の上島弘嗣氏は、心筋梗塞後でも喫煙を継続している患者が多いことに驚きを示した。佐藤氏は、あくまで想像と断りを入れつつも、「梗塞後に喫煙を続ける患者は若年者が多い。一方、最近、急性心筋梗塞後の入院期間が1週間程度と、場合によっては胆石治療の入院よりも短いこともある。患者が怖い病気だと思っていないのかもしれない。指導をさらに徹底すべきだろう」と語った。