自治医科大学循環器内科シニアレジデントの青木弘貴氏

 成長ホルモン分泌や食欲刺激など多様な働きを持つグレリン降圧作用もあるかもしれない――。3月20日から22日まで大阪で開催された第73回日本循環器学会総会・学術集会のポスターセッションで、自治医科大学循環器内科シニアレジデントの青木弘貴氏(写真)らの研究グループは、食塩負荷高血圧ラットを使った実験で、グレリンの降圧作用を示唆する結果を得たと発表した。

 グレリンは、成長ホルモン放出促進因子受容体GHS-R)の内因性リガンドとして、1999年に日本の研究グループが発見した。アミノ酸28個が連なるペプチドで、約70%が胃で、残りは視床下部、心筋、腎臓、膵臓で産生される。下垂体からの成長ホルモン分泌促進作用や、食欲刺激作用、インスリン分泌抑制作用などが認められている。研究グループはグレリンの循環器への影響を明らかにするため、高血圧に対する効果を調べた。

 5週齢のダール食塩感受性高血圧ラット(n=16)にコントロール食(0.3%NaCl)を1週間与えた後、高塩食(8.0%NaCl)+ラットグレリン投与群(n=4)、高塩食+賦形薬(ふけいやく:偽薬に相当)群(n=4)、コントロール食+ラットグレリン群(n=4)、コントロール食+賦形薬群(n=4)の4群に分けた。

 3週後に、採血と採尿を行い、心房性ナトリウム利尿ペプチド、血中アルドステロン濃度、尿中ナトリウム排泄量、尿中窒素酸化物排泄量を調べた。さらに、腎臓を取り出し、腎臓における一酸化窒素合成酵素(NOS)のmRNAの発現を解析した。

 コントロール食+ラットグレリン群、コントロール食+賦形薬群では収縮期血圧の上昇は見られなかったが、高塩食+賦形薬群では収縮期血圧が上昇した。しかし、高塩食+ラットグレリン群では血圧上昇が抑制された。コントロール食群ほどではないものの、高塩食+グレリン群の収縮期血圧は、全観察期間にわたって高塩食+賦形薬群よりも低かった。

 実験の結果、高塩食+賦形薬群と高塩食+グレリン群を比べると、高塩食+グレリン群では、尿量や尿中ナトリウム排泄量、尿中窒素酸化物排泄量が増加したり、心房性ナトリウム利尿ペプチドの発現量や血中アルドステロン濃度が低下する傾向が示された。また、腎臓においてNOSの発現が増強されることや、高塩食による左室中隔壁の肥厚がグレリン投与により抑制されることも示唆された。

 青木氏は、グレリンが降圧作用を示す機序について、「アルドステロンの低下や、腎臓での窒素酸化物の産生が亢進することで、ナトリウムの尿中排泄量が増え、降圧作用をもたらすのではないか」と説明する。

 基礎レベルの研究ではあるものの、多様な作用を持つことで知られるグレリンに、また新たな作用が見出される可能性もある。