東京大学大学院医学系研究科特任准教授の五條理志氏

 慢性期の重症心不全に対する再生医療は、補助人工心臓装着後、心筋の重量が減る前に実施したほうがいいのではないか――3月20日から22 日にかけて開催された第73回日本循環器学会総会・学術集会のトピック・ セッション、「再生医療2009」で、東京大学大学院医学系研究科特任准教授の五條理志氏は、これまでの臨床研究の結果などから考えを述べた。

 五條氏はこれまで、重症心不全で補助人工心臓を装着した患者に対して、患者自身の骨髄液中の単核球を含む分画を注入する細胞移植を行ってきた。これまで4人に対して細胞移植を実施し、どの症例でも駆出率(EF)などの心機能が回復したものの、補助人工心臓を外せるほど回復したのは1人だけだった。

 そこで、心臓の機能と細胞の増殖能の関係を調べるため、開胸術を受けた30人程度の患者を対象に、駆出率(EF)と骨髄液中の細胞の増殖能の関係を調べた。その結果、EFが悪いほど細胞の増殖能が低いことが分かった。別の実験では、左室の負荷を減らすかなくした方が、移植した細胞が生着しやすいことが明らかになった。

 また、細胞移植を受けた4人について、心エコーを基に左室心筋重量係数を調べたところ、補助人工心臓を装着後、心筋の重量が減る傾向が見られた。

 これらの結果から、五條氏は、慢性期の重症心不全に対する細胞移植のタイミング(セラピューティック・ウインドウ)は、「補助人工心臓を装着後、心筋の重量が減る前の段階で、かつ左室の負荷を減らした状態で行うのが好ましい」と述べた。「細胞移植を実施して、補助人工心臓を外せた1人は、もともと心筋の重量があった症例だ。補助人工心臓が外せなかった3人は、補助人工心臓装着後、時間がたって心筋重量が減りすぎたのかもしれない」(五條氏)。

 今のところ、補助人工心臓の装着を行っている施設は限られている。しかし、循環器内科が扱えるカテーテル式軸流ポンプが国内で開発される動きもあり、重症心不全の治療は変化しつつある。重症心不全の治療にどのように再生医療を組み込むかは、より現実的な課題になりそうだ。