日本循環器学会心臓移植委員会が開催した記者会見。右から委員長で自治医科大学附属病院長の島田和幸氏、副院長で北里大学医学部循環器内科学教室教授の和泉徹氏、幹事で岐阜大学医学部第二内科准教授の西垣和彦氏

 この10年に国内外で心臓移植を受けた日本人は、9割が生存しており、予後が極めて良好であることが分かった。日本循環器学会心臓移植委員会が3月20日、大阪で開催された第73回日本循環器学会総会・学術総会で、記者会見を開いて明らかにした。

 国内では、1997年に臓器移植法が制定され、1999年2月に新法の下で1例目の心臓移植が行われた。今年は1例目の移植から10年目に当たることから、予後継続調査の結果を公表することにしたもの。心臓移植では、これまでドナーレシピエントの情報が基本的に公表されて来なかったため、調査結果が明らかになるのは、「ほぼ初めて」だという。

 現在、国内外で心臓移植を受けるには、適応症例としての登録が必要で、日本循環器学会の心臓移植適応小委員会が、適応症例として適切かどうかを判定している。1997年から2009年3月までに適応症例の申請を行った症例数は555人。そのうち、検討中または検討中に死亡した症例を除いた550人を検討対象として、473人が適応症例とされた。実際に心臓移植を受けたのは、そのうちの150人で、うち86人が海外、64人が国内で移植を受けた。

 心臓移植委員会は、1997年から2008年10月までに適応症例の申請を行った524人を対象に、アンケートで予後継続調査を実施。524人のうち、再移植申請患者3人と、アンケートが返ってこなかった18人を除く503人を調査対象とした。心臓移植委員会の幹事を務める岐阜大学医学部第二内科准教授の西垣和彦氏(写真左)が調査結果を解析、報告した。

 その結果、適応症例の申請時の平均年齢は32歳で、男女比は2.6対1。基礎疾患の70.2%を拡張型心筋症、6.8%を拡張相肥大型心筋症が占め、心臓移植を望む症例の約80%が心筋症であることが分かった。

 503人のうち、判定で適応症例とされたのは432人。その31%に当たる136人が実際に心臓移植を受けた。国内で心臓移植が受けられたのは58人に過ぎず、適応症例の13%にとどまった。

 国内外で心臓移植を受けた136人のうち、約90%に当たる125人が現在も生存している。死亡は10人、不明1人だった。生存者の90%は、ほとんど症状がないNYHA1度に回復していた。半面、心臓移植を受けていない296人のうち生存は129人で、不明3人を除く死亡率は55%だった。

 国際的にみると、心臓移植を受けた患者の9割が生存しているという日本の状況は、国際心臓・肺移植学会が把握している全世界約4万人の予後に比べ、はるかに良好という。その理由について、北里大学医学部循環器内科学教室教授の和泉徹氏(写真中央)は、「現在、要因を分析中だが、おそらく国内の医療のフリーアクセスがこのような効果をもたらしているのではないか」とした。

 ただし、国内で心臓移植を受ける患者数が限られていることは、心臓移植を待つ患者にとって大きな問題だ。この点について心臓移植委員会は、「一般の人や医療関係者へ向けた一層の啓蒙が必要」とし、脳死の判定や年齢制限などについて、法改正に向けた議論をすべきとの見方を示していた。