大阪大学大学院循環器内科学講師の佐藤洋氏

 血管の炎症に関与するLTA遺伝子一塩基多型SNP)が、急性心筋梗塞予後予測因子として利用される日がくるかもしれない。3月20日から22日まで開催されている第73回日本循環器学会総会・学術集会のトピック・セッション、「急性心筋梗塞の予後を規定する新たなリスク」で、大阪大学大学院循環器内科学講師の佐藤洋氏(写真)が紹介した。

 佐藤氏を含む同大学教授の堀正二氏の研究グループは、心筋梗塞発症患者の全ゲノムを解析し、心筋梗塞を発症しやすい感受性遺伝子の同定などを進めてきた。そのうちの1つが、血管の炎症に関与する分子として知られるリンフォトキシンα(LTA)遺伝子の多型だ。これまでの研究からLTA遺伝子には、3つの多型が同定されている。これらの多型は連鎖平衡関係にあるため、ほとんどの人がこの3つの多型を同時に持っており、多型を持っていない人に比べて心筋梗塞の発症リスクが1.8倍に高まる。

 研究グループは基礎研究で、これらの多型によってLTAの転写が増強されたり、活性の高いLTAが産生されたりすることを突き止めた。また、試験管レベルの実験、スタチンが、内皮細胞と単球の接着を抑制するのに有効であることを示唆する結果も得た。

 LTA遺伝子の多型については、急性心筋梗塞後の死亡や心血管イベントの予後予測因子として利用するための研究も進んでいる。心筋梗塞を発症した患者を、LTA遺伝子の多型の有無で分けて予後を比較すると、「喫煙暦や年齢、性別などについて補正しても、なおLTA遺伝子の多型が予後予測因子として残る」(佐藤氏)。

 佐藤氏らは、既に大阪急性冠症候群研究会(OACIS)登録患者を対象とした後ろ向きの研究で、LTA遺伝子の多型による心筋梗塞の再発リスクが、スタチンの投与によって低減できることを明らかにしている(こちらの既報を参照)。将来的にはLTA遺伝子の多型の有無を治療に反映できる可能性もありそうだ。

 佐藤氏は、「多型と治療戦略を結びつけるためには、大規模な患者を対象にした前向き研究が欠かせない。多型が万能なわけではなく、環境要因などに応じて、患者に合った治療戦略を立てることが重要」と話した。