国立病院機構大阪医療センター臨床研究部長の是恒之宏氏

 国内での実施が増えている国際共同治験では、早期から治験に参加することで日本人に合ったプロトコールなどを設計することが重要――3月20日から22日まで大阪で開催されている第73回日本循環器学会総会・学術集会初日のラウンドテーブル・セッション「グローバル時代に入った臨床試験のあり方を考える」で、国立病院機構大阪医療センター臨床研究部長の是恒之宏氏(写真)が述べた。

 国際共同治験とは、日米欧またはアジアなどにおいて同一の評価項目、適応症、プロトコールで実施される治験のこと。欧米では以前から行われていたが、国内では電子カルテの整備や言語の違いなど、国際共同治験に参加するための障害があり、ほとんど実施されてこなかった。しかし近年、厚生労働省がガイドラインを作成するなど、国際共同治験の実施を後押ししていることもあり、国内でも国際共同治験の実施件数が増えている。

 是恒氏はこれまで、心房細動患者を対象とした3つの抗凝固薬の国際共同治験に参加した。1つ目は、経口直接トロンビン阻害抗凝固薬キシメラガトラン(アストラゼネカ、既に開発中止)、2つ目は経口直接トロンビン阻害抗凝固薬ダビガトラン(ベーリンガー・インゲルハイム)、3つ目は液凝固第Xa因子阻害薬DU-176b(第一三共)だ。キシメラガトランの国際共同治験には、フェーズ3から参加し、ダビガトランとDU-176bの国際共同治験にはフェーズ2から参加した。

 国際共同治験では、薬剤の使い方など、欧米との違いに直面したという。例えば、3つの国際共同治験の対照群はワルファリン投与群だったが、ワルファリンを投与するためのコントロールの仕方は日本と欧米で同じではない。

 欧米のガイドラインでは、ワルファリンはINR2.0〜3.0に保ちながら投与するとされているが、国内では70歳未満の患者では欧米と同様であるものの、70歳以上の患者ではINR1.6〜2.6に保ちながら投与するとされている。いずれにせよINR2.0〜3.0以内のため治験には参加できたが、結果を評価する際には影響が生じる可能性もありそうだ。

 また、BMIの分布が異なっていたり、遺伝的背景、出血しやすさに違いがあるなど、欧米のプロトコールをそのまま日本に適用するのは簡単ではない。実際、DU-176bのフェーズ2の国際共同治験では、出血合併症に関して日本人固有の因子が認められた。「そのため、フェーズ3から一部日本人用のプロトコールを適用することになった」(是恒氏)。DU-176bのフェーズ3は近く被験者の登録が始まる予定だ。

 医療機関にとって、英語への対応など、参加するだけで精一杯というところも少なくない国際共同治験。しかし、「今後は早い段階から国際共同治験に参加し、日本に合ったプロトコールを作成するなどの対応が求められている」(是恒氏)と強調していた。