高食塩食を負荷した脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットSHRSP)を用いて脳卒中におけるA IIの関与について検討した結果、A IIはAT1受容体を介してNADPHオキシダーゼ経由の反応性酸素類ROS)増加をもたらし、それがASK1を活性化させて神経細胞アポトーシスや脳の炎症をもたらしており、最終的に脳卒中や認知機能低下にも関与している可能性があることが示唆された。熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能薬理学の山本英一郎氏らが、第72回日本循環器学会総会・学術集会で報告したもの。

 食塩過剰摂取などによる高血圧が脳卒中や認知症の発症を促進することが知られているが、その詳細な分子メカニズムはいまだ明らかでない。一方、ARBによる高血圧患者での脳卒中発症予防、認知機能障害改善等が報告されていることから、これらの病態にA IIが関与している可能性が示唆される。

 8%の食塩を含む食餌で飼育されたSHRSPは1週目から酸化ストレス産生酵素のNADPHオキシダーゼが大脳で活性化され、皮質ではROSの一種であるスーパーオキサイド産生が増加する。さらに2週目からは穿通枝周囲にマクロファージが浸潤し、4週目には皮質のマクロファージ浸潤と神経細胞アポトーシスが起こり、最終的に脳卒中で死亡する。

 同氏らはA IIの役割を検討するため、ARBのバルサルタン(1mg/kg/日または3mg/kg/日)を食塩負荷と同時にSHRSPに投与し、4週間後にその効果を検討した。また、降圧による影響を除外するため、バルサルタン3mg/kg/日と同等の降圧効果が得られる量のヒドララジンを投与する群を設定した。

 その結果、ヒドララジン群では脳卒中発症率の有意な改善がみられなかったが、バルサルタンでは1mg/kg/日群、3mg/kg/日群共に有意(p<0.01)な改善がみられ、バルサルタンには降圧効果を越えて脳卒中予防効果があることが示唆された。

 次に酸化ストレス関連因子である大脳NADPHオキシダーゼ活性とスーパーオキサイドへの影響を検討したところ、バルサルタン群はいずれも有意に(p<0.05、0.01)抑制した。またROSマーカーと神経細胞マーカーの二重染色で酸化ストレスが掛かっているのは主に神経細胞であることがわかった。

 さらに同氏らはROS刺激で活性化されアポトーシスを誘導し、炎症にも関与するASK1という細胞内シグナル分子についても検討したところ、高食塩負荷SHRSPの大脳で亢進したASK1活性化はバルサルタン群で有意に(p<0.05)抑制され、神経細胞アポトーシスや、大脳皮質マクロファージ浸潤、炎症性サイトカインの発現も同様に抑制された。

 また、同氏らはNADPHオキシダーゼの特異的阻害薬であるアポシニンを使って上記と同様の実験を行ったところ、その結果はバルサルタン投与と全く同じであった。

 以上の結果を踏まえて山本氏は、「高食塩食負荷SHRSPの大脳でA IIはAT1受容体を介してNADPHオキシダーゼ経由のROS増加をもたらし、それがASK1を活性化させることがわかった。また、ASK1は少なくとも機序の一部において神経細胞アポトーシスや脳の炎症をもたらすと考えられる。さらに神経細胞のアポトーシスや炎症が認知機能障害に関与するとの報告もあることから、これらの経路は最終的に脳卒中や認知機能低下にも関与している可能性が考えられる」と結論した。