東邦大学心臓血管外科学教授の小山信彌氏

 DPCを導入している病院では、診療単価平均在院日数を抑制すれば短期的な収益が改善する。しかし、行き過ぎたコスト削減は診療報酬の見直しにつながり、結果的に自分の首を絞める――こんな指摘が注目を集めた。3月29日に開催された第72回日本循環器学会総会・学術集会のシンポジウム「循環器診療をとりまく医療経済の現状と問題点」で、東邦大学心臓血管外科学教授の小山信彌氏が講演したもの。

 DPC病院では、各疾患について「診断群分類番号DPCコード)」という14桁の数字が割り振られており、その番号を基準にして診療報酬が決められている。DPC病院が毎年提出しなければならないデータは、患者情報のほかに、DPC点数Dファイル)、出来高点数Eファイル)、Fファイル(出来高の詳細な内容)がある。これらは行政サイドで解析され、医療機関別の係数やDPC点数の見直しなどに使われている。

 小山氏はこの仕組みの問題点として、医療機関がコストや入院日数などを自己努力で削減すると、その結果をもとに診療報酬規準の見直しが行われる点を指摘。「診療行為の削減が、医療機関自身の首を絞める結果になっている」とした。

 具体的な例として、心臓カテーテルに対する入院期間の診療報酬点数や入院日数について、ここ5年間の削減幅を提示した。狭心症に対する入院期間点数は(DPCでは入院の種別を1種、2種、特定入院に分けている)、2003年度には1種が6143点だったものが2008年度から4172点(32%減)に、2種は4540点から3356点に(26%減)、特定入院は3859点から2853点に(27%)、いずれもここ5年間で約3割削減されていることを示した。

 入院日数の削減幅はより顕著だ。1種は2003年度に4日だったが2008年度からは2日に(50%減)、2種は7日だったのが4日に(43%減)、特定入院は12日だったのが5日に(59%減)、半減、あるいはそれ以上の削減が行われた。

 DPCは、病院が検査や処置を外来で実施する原動力になっており、制度上の問題点として、本来必要な検査まで削減される可能性が以前から指摘されていた。小山氏は、「心カテの分野でこれだけ評価が下がっている要因には、DPC病院による診療行為の削減が大きい。短期的な収益の改善策としては有効かもしれないが、それが患者に不利益をもたらしている。制度上の問題でもあるが、必要な検査、処置、入院日数を必要以上に削減していくことで、医療機関が自らの裁量権を失いつつあることに気付く必要がある」と訴えた。

 DPCは2003年に82カ所の特定機能病院で導入され、現在は360病院に適用されている。2008年度には718病院に拡大される見込みだ。小山氏は、「小回りの利く病院でDPCが導入されると、今以上に診療行為の削減が進み、さらに評価が下がるのではないか」と懸念を表明した。